後期授業も終わり、学生達は学園祭の後の試験の準備をしています。1年間の調理実習で学んで欲しい事柄の一つが、食文化についてです。
食文化といえば和食文化に繋がります。自然の恵みを余すことなく大切に使い、四季折々の旬の食材を多用し、日本人に合った食形態や食習慣等を体感し、伝承していくものだと思っています。
授業の中で最初に学ぶ事が、包丁の取り扱いです。最も重要な調理道具の一つで、その構造と研ぎ方、使用方法を説明します。そして切り方のコツ。魚の卸し方。
和風だしのうま味成分と取り方も学びます。最近では市販の即席だしが種類も豊富で手軽に利用されていますが、日本の独特の昆布、かつお節、煮干し、干ししいたけ等でだしを取って調理をします。
深みのある、本物のだしの味を覚えてもらえると良いのですが。
調味料は日本ならではの発酵や熟成を利用したものが多く、調理で入れる順番にも理由があり、間違えて入れると食材が軟らかくならなかったり味がしみ込まなかったりと間違えながらも学んでくれたようです。
お赤飯と煮魚・俯瞰
和食の配膳の仕方は、日本の食事パターンに合わせ、主食や汁、主菜、副菜、副々菜の位置とその理由も説明します。主菜は皿を持ち上げず、主食は基本的に左手で持つ時間が長く、汁はとりやすくこぼしにくい位置です。昔ながらのセオリーを守ると食事の風景も美しいものになります。
ブッシュドノエル
てんぷら実習
日本の行事食や通過儀礼の食にも触れ、お祝い事に利用できるお赤飯やクリスマスケーキにもなるブッシュドノエル、お正月料理として伊達巻やいりどり、菊花かぶ、関東風お雑煮の作り方、てんぷらやしじみ汁、ちらしずし等、授業に組み込んで、少しでも若い世代に伝える努力を続けています。
お正月料理
ちらしずし
栄養士養成校における努力が実るのは少し先のことでしょう。
授業中の画像を載せました。楽しく学び、先につながることを期待します。学校給食や保育園給食、病院、高齢者施設、これから働く先々で変化のある献立を作るための基礎を学んでもらいたいものです。
ポイントは調理法が色々ある(煮物・焼き物・和え物等)、味付けに変化がある(酸味・苦味・甘味・辛味・鹹味)、水分量・切り方・歯ざわりに違いを持たせ、彩のある、食べて美味しい食事が作れるようになることです。
最終授業後
年間30回の授業の中で伝えるべき食文化はまだまだ足りていません。次年度も続けていきたいと思っています。
【著者】澤坂明美=管理栄養士。女子栄養大学香友会と業務提携し『プロカメラマンとフードコーディネーターに教わる料理写真講座』を継続開催、女子栄養大学認定料理教室等を主宰する。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2025年2月17日号掲載