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学校と地域を結ぶ役割を果たす~PTA活動の意義を巡って討議~日本PCA教育振興会 第13回大人の教育シンポジウム

2025年2月17日

PTA活動のあり方が改めて問われる中、日本PCA教育振興会(島田益吉会長)は「子どもたちと地域の関わり」をテーマに第13回大人の教育シンポジウムを昨年11月19日、都内で開催した。文部科学省が進めるコミュニティ・スクール(=CS学校運営協議会制度)の取組や地域・生徒の意思を反映させた世田谷区の学校運営、千葉・木更津市のPTAのOB・OGが学校と地域人材の橋渡しとなっている事例などが紹介され、変容する社会に対応した柔軟なPTA活動のあり方が話し合われた(後援:文科省「早寝早起き朝ごはん」全国協議会、㈱教育家庭新聞社他)。

5年ぶりに開催されたシンポジウム

コロナ禍の影響から5年ぶりの開催となった今回のシンポジウム。コーディネーターを務めたのは元文部科学省審議官の寺脇研氏。パネリストは文部科学省地域学習推進課長の高木秀人氏、世田谷区長の保坂展人氏、国立青少年教育振興機構理事長の古川和氏、日本PCA教育振興会特別相談役の明石要一氏。

元文部科学省審議官 寺脇研氏

寺脇氏によると近年ではPTA活動に参加しない保護者も増えており、教員にとってもPTA活動が大きな負担になっている。PTA自体が存続の危機にある中、どのような対応が考えられるかを問いかけた。

文部科学省地域学習推進課長 高木秀人氏

文科省の高木課長は学校単位のPTA活動は地域や子供たちにとっても有意義なものだが「強制的に役員に選ばれた」などの発信がSNSでも目立つようになってきたという。「PTA活動は強制されるものではなく自発的な参加が求められる。PTA活動は大変というイメージを持っている人もいるが、そうした点を改善していく必要がある」と発言。また、文科省では地域住民が学校運営に参加するCSの取組を進めており、そこでもPTAは重要な存在となる。PTAのOBやOGなどがCSの活動を応援するなど学校教育活動を地域で支援することが期待されると説明した。

世田谷区長 保坂展人氏

世田谷区長の保坂氏は全国で校内暴力が発生した1980年代に教育ジャーナリストとして活動。国会議員を経て2011年から世田谷区長に就任し、教育問題を重要課題として取り組んでいる。10年ほど前にオランダの教育現場を視察した際、異年齢の子供たちが一つの教室で学ぶ姿を目にした。「そこでは一人ひとりが異なるカリキュラムで学び、地域の人たちに学習成果を発表していた。また、オランダでは保護者の署名が集まれば、その要望に沿った学校を設立することができる。世田谷区でも桜丘中学校では制服を無くし、校則も生徒の自発性にゆだねられた。不登校対策が重要な課題となる中、桜丘中学のように生徒や地域の思いを反映した学校経営が求められているのではないか」と語った。

国立青少年教育振興機構理事長 古川和氏

青少年に体験活動の機会などを提供している古川理事長は自身もPTA活動を体験してきたが、子供たちの活動を周りの大人が支えることが大事だとする。「自分がPTA役員だった頃は子供たちに貴重な体験をさせようと努めてきた。子供たちにとって楽しい学校にするためにはどうしたら良いかを先生方と話し合ったが、その経験からPTAや地域が子供を育てるうえで欠かせないものだと実感した」という。

日本PCA教育振興会特別相談役 明石要一氏

千葉大学で長年にわたり教員養成に携わってきた明石氏は「PTA役員になって良かったこと」を約500人の保護者に調査したところ「PTA活動を通して、学校のことがよく分かった」という回答が多く返ってきた。またPTA活動を通して「子供を客観的に見ることができるようになった」との回答も見られた。

「千葉県木更津市では25年程前から学校支援ボランティアの育成に努めているが、PTA役員のOB・OGが学校支援ボランティアのコーディネーターとなり、学校と地域の人材の橋渡し役となっている」という事例を紹介。CSができてから20年が経ち、現在6割の学校で導入されているが、今後は地域学校協働本部と学校運営協議会の両輪で取り組むことが望まれると述べた。

■学校5日制による子供たちへの影響

学校完全週5日制が施行されてから20年以上が経ったが、子供たちの何が変わったかを寺脇氏が問いかた。

古川氏は1992年に「Teaching Kids to Love the Earth」を立ち上げ、保護者の協力を得ながら化石採集やムササビの観察など土日を利用して、学校ではできない体験を提供してきた。こうした体験を通じて科学的な側面から洞察する力が培われるという。

保坂氏は今の子供たちは土日にも塾や習い事があり、忙しすぎることが問題だとする。「世田谷区教育委員会では子供が学校から町に出て、そこで学びにつながる体験が得られるように活動している。時間も忘れて過ごすようなことを、もっと子供の頃に体験してほしい」と要求。世田谷区では羽根木公園をプレーパークにして秘密基地を作ったり、木登りをするなど子供たちは自然の中で活動している。現在、プレーパーク方式の子供の遊び場は全国約500か所に広がっているという。

明石氏は学校5日制になったにも関わらず子供は忙しくなり、放課後に遊ぶ時間も無くなってきたことを問題視。人口減少により統廃合となる学校も増えているが学校が無くなることは地域の消滅を意味する。ふるさと納税の返礼品を子供とPTAが考えるなど協力して地域のアピールを図るべきだと主張した。

学校5日制が始まる前は外部に閉ざされていた学校が開かれてきた。それが子供にも良い刺激になっているのではと寺脇氏は考察する。

明石氏は千葉市の「子ども会議」を紹介。小学生に市の現状と課題を話し合ってもらう「子ども議会」は、公募により選ばれた小学5・6年生がテーマごとのグループに分かれ、市への提案や質問を行った。子供から提案された意見は市の行政に反映されるなど子供の社会参加を促すものとなっているという。このような取組を増やしていくことが望まれると語った。

保坂氏よると「子どもの権利条約」に基づいて「世田谷区子ども条例」を2001年に制定したが一部改正して名称も「世田谷区子どもの権利条例」と改める予定。「作成にあたっては子供たちとワークショップを重ね、目指す方向性などを取り入れて報告書にまとめた」という。

古川氏は子供に社会教育を教える時は一緒に学ぶというスタンスをとってきたと言う。社会教育には正解があるわけではないため、何度も失敗しながら子供の非認知能力を伸ばすことが大事だと語った。

寺脇氏は「子供と地域の関わりを推進するためにも、新しい視点からPTA活動を広げていくことが大事。大人たちが自分にできることから子供の教育に関わることが理想」としてシンポジウムを締めくくった。

 

教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2025年2月17日号掲載

 

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