公費によるHPVワクチンのキャッチアップ接種の期限が2025年3月までと迫っている。日本では子宮頸がんの原因としての認識が一般的。ところが近年世界的に増加している中咽頭がんの6割がHPVであることなどから、(一社)日本耳鼻咽喉科頭頚部外科学会は女性だけでなく男性も知っておくべき医療知識だと訴えている。
11月1日都内で、同学会が主催し「MSD医学教育事業助成セミナー 今改めて知ろうHPV関連がん ノドのがんが増えています!」を開催。子宮頸がんの原因であるヒトパピローマウイルス(HPV)は、他にも様々ながんの因子となり、関連では世界のがんの5%を占めるという。特に中咽頭がんの原因だった飲酒・喫煙を超え、現在は6割がHPVだという。
名古屋市立大学大学院耳鼻咽喉・頭頚部外科の川北大介氏は、HPV関連がんについて国内外の動向を説明。HPV関連がんには子宮頸がんの他にも外陰・膣がん、陰茎がん、肛門がん、中咽頭がんがある。
2016年から18年の全国がん登録の平均年間数は子宮頸がんが7599件、中咽頭がんが3766件。10万人当たりでは子宮頸がん6.0人、中咽頭がん2.97人。世界平均は子宮頸がん3.84人、中咽頭がん1.29人で日本の半分に近い。川北氏は「HPV関連がんは、ワクチン普及などで予防可能な疾患であって、ワクチン適応の拡大を期待する」と述べた。
横浜市立大学医学部・折舘伸彦氏は中咽頭がんが世界的に増加していることと、日本の取組と課題を指摘。このため毎年7月27日「世界頭頚部がんの日」として啓発。同がんは男性患者が多いことが特徴だ。
HPVワクチン接種の欧米各国の取組をみると、2006~8年に接種プログラムが導入されたが日本では2013年。対象10代前半の男女だが、日本は女子のみ。接種率はオーストラリア、カナダ、イギリスの女子が80%以上、男子も70%以上。低かったフランスは女子37%、男子データなし、ドイツは女子47%、男子5%、日本は女子7%だった。
男性が接種を受けようとする場合、多くは個人負担となる。しかし同学会をはじめ各界からの訴えを背景に、男性接種の公費助成を実施する自治体は東京都の区市をはじめ徐々に増えている。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2024年11月18日号掲載