「学校給食の今日的課題と栄養教諭の役割~冷凍食品の活用が課題解決の一助に~」と題し、(公社)全国学校栄養士協議会会長・長島美保子氏が基調講演を行った。
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2022年に文部科学省が「養護教諭及び栄養教諭の資質能力の向上に関する調査研究協力者会議」を立ち上げ、栄養教諭の役割について議論されてきた。学校栄養職員が主として学校給食の管理を担うのに加え、栄養教諭は子供たちへの食に関する指導を一体的に行うことが求められるが、食に関する指導が十分でないと指摘されている。
栄養教諭は管理栄養士のライセンスと教員の資質を併せもつが、その能力が活かせず児童生徒から頼られる存在になっていないケースがある。栄養教諭は学校における食育推進の中核を担う存在であり、給食の時間を利用して教室で計画的に食の指導に取り組む、また健康課題のある児童生徒に対しては個別的な相談・指導にあたることが求められる。
学校給食の管理では、摂取エネルギーや栄養バランスなどがとれた学校給食が提供されるよう、文科省が定めた学校給食実施基準に沿って、栄養管理を実施。さらに、学校給食衛生管理基準に基づき施設・設備や食品、学校給食調理員の衛生管理を担当する。この「学校給食の管理」と「食に関する指導」の両方の比率を考え、バランスよく進めることが大切だ。
文科省の「食に関する健康課題対策支援事業」のゴールの1つに、栄養教諭の個別指導能力の向上をあげ、学校全体の食育の充実につなげる。さらに個別指導のポイントや課題などのノウハウを収集し、事例集を作成して横展開することで効果を全国に波及させること。
今後、ICTを活用することで給食管理業務のデジタル化など業務の効率化を図ることが期待される。すべての学級への指導や児童生徒への相談指導など、時間を確保するには限界があるが、ICTを活用して栄養教諭の指導を一斉配信、共同調理場とオンラインで調理の様子をリアルタイムに見せ食育の効果を高めるなどが可能になる。
文科省は教育委員会に「教諭等の標準的な職務の明確化に係る学校管理規則参考例等の送付について」を発出。そこでは栄養教諭が専門性を発揮し、職務に集中できる環境を整備するよう求めている。栄養教諭からも声をあげてほしい。
子供たちにとって給食の時間は学校生活の中で最も楽しい時間。冷凍食品を正しく理解して活用することで、献立の幅が広げられる。冷凍食品は①衛生的、②調理の効率化が図れる、③発注・仕入などの業務の軽減につながる、④品質・価格・供給が安定しているなどの特性があり、豊かな献立内容を目指すことにもつながる。今後、冷凍食品の正しい理解を教員や保護者に広げ、普及することを期待したい。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2024年10月21日号掲載