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防災教育への視点 一般財団法人防災教育推進協会 理事長 濱口和久~第3回 自然災害への向き合い方

2024年9月23日
連載 防災教育の視点

自然災害とは「忘災」との闘い

平成23(2011)年3月11日に起きた東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)では、「想定外」という言葉が連発された。その後も自然災害が起きるたびに、「想定外」という言葉が後を絶たない。

逃げられない自然災害から命を守るためには、可能な限り「想定外」をなくすことが何よりも欠かせない。そのためには、日ごろからの防災・減災の実践が求められる。加えて知災・備災という概念を含めた『4つの災』(防災・減災・知災・備災)が、命を守るうえで必要な要素となってくるだろう。

「防災」とは災害予防及び災害応急対策をまとめた概念であり、「減災」は被害を最小化するための取組だ。防災が被害を防ぐという字をあて、被害を出さないことを目指す印象を与えるのに対して、減災とは、ある程度の被害を想定したうえで、その被害を低減させることを強調するものである。

「知災」は言葉のとおり「災害を知る」「災害を調べる」という意味がある。最低限、自分が暮らす地域で過去に起きたさまざまな自然災害の履歴を調べておくことによって、経験したことのない自然災害から命を守ることが可能となる。実際、全国には災害の記憶を伝えるための碑などが数多く残っている。

例えば、広島県安芸郡坂町小屋浦地区には、明治40(1907)年に起きた土石流で44人が犠牲になったことを伝える『水害碑』が2基建立されていた。被災の生々しい状況を漢文で記し、死没者全員の名前が刻まれていた。ところが、小屋浦地区では、石碑の言い伝えが忘れられていたため、平成30(2018)年7月の西日本豪雨では15人が犠牲となる事態となった。当然、第1回で説明したハザードマップの確認も怠るべきではない。

「備災」とは「災害に備える」ということである。自然災害が起きると、公的セクターが助けてくれるという意識が日本人には強いが、基本的には公的セクターに依存しないで自分や家族の命を守るための備えが必要だ。水・食料・簡易トイレの備蓄や、家具の転倒対策、日ごろから地域の防災訓練などに積極的に参加することで、住民同士が助け合う態勢を構築しておくことも重要になってくるだろう。

防災意識の定着を図るうえで、『4つの災』に加えて、もう1つ大切なことがある。

それは「忘災」に陥らないということだ。人間は嫌なことは考えたくない、忘れたいという気持ちを持っている。自然災害との闘いは忘災との闘いでもあるのだ。

 

教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2024年9月23日号掲載

第1回 日常防災の必要性

第2回 正しい避難行動と防災知識

第4回 史料から災害を読み解く

第5回 「稲むらの火」と「世界津波の日

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