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学校施設

連載「和食」日本の伝統的な食文化を引き継ぐ(2024・後編)~地元の魚も野菜も和食で存分に 四国中央市立土居学校給食センター(愛媛県)

2024年9月23日

本連載後編では、地元の食材を存分に活かした和食献立を実践する、学校給食センターの取組を紹介する。

(連載前編はこちら→https://www.kknews.co.jp/post_health/20240715_2b

愛媛県四国中央市には、自校調理方式の川之江地域と、学校給食センターが三島地域、土居地域、新宮地域にあり、各地域が異なる献立で学校給食を提供している。

2023年11月24日の「和食の日」の献立

倭村果歩栄養教諭

今回取材した土居学校給食センターでは、幼稚園1園・小学校5校・中学校1校の計約1060食を作っている。日々の献立作りと食の指導を行っているのは倭村(いむら)果歩栄養教諭。

昨年の「だしで味わう和食の日」の献立は、けずりぶしと昆布の合わせだしを使ったすまし汁、愛媛産の鰆の照り焼き、キャベツ・きゅうり・沢庵の和え物、土居地域のみかん、牛乳。野菜も含め地元の食材を多く使用した。

当日、児童生徒には各校の校内放送やHPで和食への興味・関心を高める内容を発信した。土居中学校では「11月24日は『いい日本食』と読んで『和食の日』です(中略)ここでクイズを出します。今日のすまし汁は、昆布と何のだしから作られているでしょうか…」といった放送が流れた。ちなみに昼の放送は倭村栄養教諭が毎日のシナリオを作成し、各校で放送されている。食の指導の重要なツールとなっている。

地元の食材を活かした和食献立中心の学校給食

児童生徒に配布する毎月の献立表では、地元産の農水産物を太字で記載。それらが毎日使われていることが分かる。児童生徒の家族が育てた野菜等もあり、教室や家庭で話題になることも。

魚も多く登場する給食の時間(土居小学校)

 

媛いりこ

媛いりこでだしをとる

給食で頻繁に使うだしは地元産「媛(ひめ)いりこ」から。こちらも地元産の麦味噌を使い、味噌汁にするのが定番だ。さらに郷土料理である媛いりこの炊き込みご飯は、柔らかくなった媛いりこをまるごと食べられる。

 

地域の鮮魚店からは旬の魚を仕入れ、塩焼きなどで積極的に学校給食に取り入れている。骨もあるが「箸の使い方を身につけたり、魚料理に慣れるためにも、定期的に出しています。他の地域より(魚献立の)頻度も多い」。保護者への啓発も意識しているという。

 

野菜類も豊富で、特産品の里芋は地域で「いもたき」(芋煮)を楽しむ風習も。給食では「そぼろ煮」や「里芋シチュー」などで出される。

里芋

地元産の里芋も美味しい

愛媛県の南予地方出身の倭村栄養教諭は、東予地方の土居地域に赴任し、その土地ならではの美味しい食材を知った。「県内でも地域によって特産物が違う。だからこそ、実は当たり前ではない地元の良さを、子供たちにしっかり伝えたい」。

 

 

 

 

学校給食センター発 食の指導

地元で採れる特産品について、野菜類は、じゃがいも、さつまいも、ホウレンソウ、小松菜、トマト等々普段から取り入れやすい産物が多い。米は「うまそだち」(うま=宇摩、土居地域を含めた地域の名称)があり、学校給食でも使用している。

こうした地元の食材を学校給食に取り入れるため、四国中央市では、各地域ごとに月に1回、「野菜部会」の会議を開催している。土居地域では、倭村栄養教諭のほか、栄養士、JA職員、県職員ら約10名が参加。使いたい・使って欲しい食材の希望を話し合うだけでなく、野菜を作る苦労や、野菜を育てる苦労、農家の想い、料理の由来などについて話を聞く。

毎日のお昼の校内放送のシナリオには、単に献立紹介だけでなく、こうした話を盛り込み、児童生徒に向けて発信されていく。

 

 食の指導を各教科の授業で

毎日のお昼の放送で発信するだけでなく、倭村栄養教諭は食の指導のため、各校それぞれに毎月2~3回は足を運ぶ。4時間目に、生活科や総合的な学習の時間、社会科、家庭科などの授業に担任や指導教員と共に指導に当たり、そのあと児童生徒と一緒に給食を食べる流れになることが多いという。

 

例えば小学校2年生の生活科では、野菜について扱う中で「苦手な野菜でも、その良さを見つけること、生産者の想いを伝え、普段から食べ物を大切にし、感謝の気持ちを持つ子供たちに育って欲しい」(倭村栄養教諭)。

土居中学校の調理実習

倭村栄養教諭が家庭科教諭と共に指導した家庭科の授業では、生徒もいりこだしに挑戦して味噌汁を作った(土居中学校)

中学生との交換ノート

調理の現場では、直接児童生徒の声を聞くことはできない。そこで、学校給食センターの隣にある土居中学校と「調理員さんとのコミュニケーションノート」で交流を図っている。

中学校の各学級に1冊ずつ用意されたノートには、日直の生徒が学校給食の感想などを記入、給食の配送を利用して学校給食センターとやりとりをする。

交換ノート

土居中学校の生徒と学校給食センターとを行き来する「調理員さんとのコミュニケーションノート」

生徒たちからは「美味しかった」「また食べたい」、時にはメニューのリクエストもある。こうした感想は、倭村栄養教諭はもちろん、学校給食に携わっている栄養士や調理員のモチベーションにもなっているという。

土居中学校

土居中学校の給食の時間

 

YouTubeチャンネル「しこちゅ~ 学校給食チヤンネル」も、でレシピ動画や、保護者への啓発も

https://youtube.com/playlist?list=PLxQYij0m0x-7rnwKh1XAzl5E4YBkUAlKm&si=BpMKksDPMm7KurCy

 

 

「だしで味わう和食の日」参加校募集

11月24日は「和食の日」。学校給食で子供たちが和食に触れる機会にしませんか。和食文化国民会議では、全国の保育園・幼稚園・こども園・小学校・中学校・特別支援学校などの学校給食や授業で活用できるリーフレットや、ダウンロード素材、「和食の日」の実践事例の資料などを用意しています。

https://washokujapan.jp/dashi-document/

 

教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2024年9月23日号掲載

(一部Webのみ掲載記事です)

 

連載「和食」日本の伝統的な食文化を引き継ぐ(2024・前編)

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