毎年、新学期の始まりは、学生だけでなく指導する講師、助手共に緊張して臨みます。今年度の学生の雰囲気は?理解力は?ここ数年はコロナの影響でリモート授業や、人数を減らした実習であったり、双方ともに気苦労がありましたが、昨年のコロナ五類移行を受け、少し安心して対応できるようになりました。
一方で、今までは思いもよらない課題が見えてきました。特に今年度の学生たちは、名前を呼んでも返事をしてくれないことが多く、何故だろうかと考えました。中学3年生から2~3年間、リモートで授業を受けていた関係で、画面越しに声を発する必要性が無かったようです。また、人とのかかわりは極端に少なくなり、他者への興味がないように見えます。
実験実習の中でも、調理実習は1グループ5~6名で行う為、互いに相談しながら作業を進めないと時間内に終了しません。約一時間のデモンストレーション後、助手の先生による指示のもと作業を開始するのですが、中々理解できないのか、自ら動こうとしないのか、進行は遅れがちです。見た目は、しっかりデモを見ているようですが、まるで違ったことを始めます。恐らく、指導している内容が耳に(頭に)入っていないのでは?もしかしてバックグラウンドミュージック?常にイヤフォンをつけて大音量で音楽を聴いている皆さんにどのように伝えれば良いのか。
順調なら、2年で栄養士のライセンスを持ち、社会に出て仕事をする事になるのですが、指導する側でどこまで学んでもらえるかが大切です。
今週の実習では、ガトーフレーズ(いちごのショートケーキ)とカスタードプリンを作成してもらいました。お菓子作りというより調理科学的な観点から、小麦粉を膨化させることを学んでもらう目的です。それと同時に、生クリームの攪拌方法と、卵の熱凝固も課題です。
失敗が多いかと思ったところ、間違ったのは1グループだけで、すぐに作り直してもらいました。懸念していた割に上手に作ってくれたので安心できました。成功体験を積まなければ、調理の楽しさは理解できません。夏休み後に実技試験を行い、前期本試験があります。
昨年、指導した学生は現在、週に1回、集団調理実習として給食を毎回350食程作って提供しています。技術的にも随分成長した気がします。今年の学生も、いつか成長してくれることを心待ちにしています。
今年の学生が作成したガトーフレーズの写真をお見せします。
【著者】澤坂明美=管理栄養士。女子栄養大学香友会と業務提携し『プロカメラマンとフードコーディネーターに教わる料理写真講座』を継続開催、女子栄養大学認定料理教室等を主宰する。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2024年7月15日号掲載