学校給食の改善充実に向け文部科学省は、今年度の新規事業として「食品ロス削減」のための食材調達方法等を調査研究テーマに設定、研究委託する方針だ。昨年3月に公表された「学校給食における食品ロス削減に関する調査研究」(文科省2022年度委託調査)によると、8割が「調理場の食品ロス削減」に取り組んでいる一方、「食品廃棄物の再利用」の取組は4割にとどまっているという実情だった。
全国自治体の教育委員会を対象にしたアンケート調査で、866件から回答があった(回収率48.4%)。
回答があった教育委員会の78.9%が「調理場における食品ロスの削減」に取り組んでいる。取組の内容は「残食を減らす献立の工夫」(65.3%)や「調理過程で生ごみを減らす工夫」(39.5%)など。
「残食を減らす献立の工夫」の具体例は他に、教科の学習と連動した献立を取り入れるなどで、児童生徒の食に対する興味関心を高める工夫などもあった。さらに献立の改善への工夫で、栄養教諭や調理員だけでなく、管理職や保護者も参加して協議するなど学校が一丸となって対応している取組もあった。
「調理過程で生ごみを減らす工夫」では、食材の有効活用としては、廃棄物を減らす食材の処理(皮むきや切り方の工夫)、野菜の茎や葉を食材に活用するなど可食部分を増やすという回答が見られた。生ごみの減量では処理器の活用だけでなく、野菜の水分を減らすことでごみの容量を減らすなどの取組があった。
削減の取組が未実施・未対応の理由には、「調理員の人員不足」、「ノウハウや効果的な手法の情報が不足」、「施設の構造や設備の状況により実施が困難」、「生ごみをリサイクルできる業者が地域にないため」などが上げられた。
回答があった教育委員会の40.0%が「食品廃棄物の再生利用」に取り組んでいる。そのうちで最も多い取組は「肥料化」(26.1%)、次いで「飼料化」(12.3%)だった。
廃棄物を外部業者に依頼している他、センターや学校で肥料化している場合は、「授業の一環として調理場から回収した生ごみをコンポストで肥料化し、校内農園で野菜を作っている」などの事例。外部業者に委託してできた肥料で栽培された農作物を給食用の食材として購入しているという回答もあった。
「飼料化」の取組では、畜産・養鶏業者への提供の他、学校で飼育する動物や近隣の動物園の動物への飼料提供などの取組があった。課題は地域住民によるにおいへの苦情や扱える業者が少ないなどが上げられた。
未実施の理由には「飼料化、肥料化をする機器がなく設置する場所もない」、「廃棄処分する以上に費用がかかる」、「対応できる人員、ノウハウがない」などがあがった。
また「害虫を引き寄せてしまうリスクがある」、「飼料・堆肥用に引き取っていた近隣農家がなくなった」等の理由で中止した事例もあった一方、「施設の改修予定で生ごみ処理機の導入を予定」、「処理費用の高さが理由で中止しているが、SDGsの観点からも必要だと考えるため今後再開を検討する予定」という回答もあった。
回答があった自治体のうち「児童生徒の食品ロス削減に向けた理解促進のための実践」に取り組んでいるのは78.4%。取組の内容では、小学生は「給食の時間」が55.8%で最も多く、次いで「家庭」「総合」「社会」がいずれも3割以上。中学校もほぼ同様の傾向だった。
主な事例には、総合の時間を活用し、外部講師を招いた、チェーンストアのオンライン講座を受講するなど地域のリソースについてを取り込んだ活動が見られた。その他「食品ロスを考えるスライド資料を給食時に視聴」、「給食時の校内放送で食品ロス削減の理解を促進している」、「給食センターの見学を行い、食品ロス削減の重要性を学んだ」、「SDGsを意識しながら米、野菜等を栽培し食べ物の大切さを実感させた」などが上げられた。
一方で「授業の直後は残食が減り効果があるが、持続しない」、「給食時間の指導では準備に時間を要すると、喫食時間が減り残食量が増える」、「学校だけでは難しく、家庭と連携して取り組む必要がある」など、課題も明らかになった。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2024年7月15日号掲載