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給食への提言-給食の時間を活用して食育の授業を展開~毎日1分間でも年190分に

2024年7月15日

長野県長野市で8月1・2日開催される第1回全国学校給食・栄養教諭等研究協議大会。同大会分科会助言者の一人で、学校給食や食育の推進について学校経営の立場から、積極的な指導・提言を行っている東京都調布市立杉森小学校・濱松章洋校長は学校の食育推進には「給食の時間」を有効に活用することがポイントだと指摘。同大会や栄養教諭・学校栄養士職員(以下、栄養教諭等)への期待を聞いた。

東京・杉森小学校校長 濱松章洋氏


-大会では「食育を推進するための校内組織の在り方と食に関する指導の全体計画に基づいた実践の必要性」を主題にした分科会で指導助言者を務めますね。

「保護者も教員も食育が大切ではないと考える人はいないと思う。だから学校教育の中で食育を重視しようと考えることができるかどうかが大切な部分。2005年の食育基本法から食育という言葉が意識された反面、そもそもが『健康』という領域に含まれ、学校教育における食育の位置付けが曖昧で、未消化に思っている人は多いと思う。例えば各教科、あるいは総合的な学習の時間、特別活動などが従来の学校教育のイメージ。食育は広く網羅的に取り扱っているわけで、全教育活動を通じて行う道徳教育と同じ」

「給食の時間は『食育の授業時間』だと私は主張している。栄養教諭等や学級担任の先生たち、指導する先生たち皆にその意識を持ってもらいたい。食育の素晴らしい実践はたくさんある、けれど実践者の異動で風化したということが多々起こる。では全国共通の食育の学習とは何か、それは間違いなく給食のはず。給食の時間に担任が栄養教諭等から提供された情報を子供たちに伝えてあげる。給食ごとに1分間でも年間190分、9年間続けたら大変な時間数になる。そうすれば給食から発して、食育の授業での取り扱いを考え、全体計画に発展する」


-給食では教科との関連を図った献立作成が求められています。

「例えば国語で大豆を教材として取り上げたとしても、食育はあくまでもその教科の学習目標を達成するために有効な一つの手段としての取扱いであって、それが国語の目標にとって代わって、食育の視点が最優先の目標にはなりえないが、教科を支える、興味関心を教科につなげることはできると思う。そういう意味で教科と連携しコアになるのが給食だろう」


-栄養教諭等の学校組織における役割がとても大切です。

「栄養教諭等は1人職で大変ご苦労をしている方も少なくないと思う。でも志は高く、子供たちに食の大切さを伝えたい、おいしいものを食べて幸せになってもらいたいと考えていると思う。ところが新人だと職員室で先生方とどうつながるかがまず難しい。調理室ではベテラン調理員の理解協力が得られなければ考えた献立が作れない」

「例えば栄養教諭等の思いや願い、そして子供たちに伝えたいメッセージを毎回『給食メモ』として発信している。ところがそのメモを先生たちは読んでくれない。大切な情報だと認識していないのかもしれないが、自分から先生に読んでくださいとは言いづらい。1人職だし人間関係に係ると思うから。『いつ読むの』と聞かれるかもしれない。読んでも1分かからないのに」

「私は前任校で、いつ読むのか議論になったことがあり、給食時間には‘空白の時間’が必ずあるからそこを使えばいいと提案した。何もせずに座っているだけの時間、それは配膳が終わり当番が着替えている時間。着替えを待たず先に食べ始めるクラスはないから。そういう示唆を与えるのもリーダーシップの一つだと思う」


-些細なことでも学校の文化を変えるには校長のリーダーシップが必要ですね。

「食育、給食指導だけのことではないが、先生たちの意識が変わらなかったらシステムを変えるしかない。システムは引き継がれるから『給食メモを読む』ことをシステムにしてしまえばよい。何かを変えるなら、やらざるを得ないようにシステム化を。やった方が楽だとか得だとか、指示命令ではなく誘導するのもリーダーシップだと思う。その先に食育が学校の文化として定着する」

「栄養教諭等が自分の願いを遂げる手段の一つが、管理職の理解賛同を得ること。例えば校長が血圧が高いことを気にしているとしたら、給食には高学年でも塩分1食3g未満という基準があること、ただ塩分を減らすだけでなくおいしさのために出汁や他の素材で補っていること、野菜のカリウムが過多な塩分を体外に排出する働きがあることなどを説明する。『給食メモ』に書いているので他の先生方に読むように伝えることで協力者になってもらう。大会ではそういう生きた情報を交流の中で学んでほしい。トップランナーの実践をみんなが共有すればいい」


-食育が学校の文化として定着するために、システムが重要ですね。

「文化の定着にはよく言われる『1人の100歩より100人の1歩』という考えが大切。栄養教諭等は1人職の立場でもあるため、1人で何歩も進もうとしがち。でも1人で突出するのではなく、周りを絡めていくことが食育の定着のポイントではないだろうか」

 

教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2024年7月15日号掲載

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