気候変動と健康に関する国際共同研究事業「ランセット・カウントダウン」が発表した「健康と気候変動に関する2023年報告書」で、熱中症や感染症の拡大、栄養不良等健康への脅威がより深刻になる可能性があると結論。医師・研究者ら医師たちの気候変動啓発プロジェクトがこの結果を踏まえ、子供の健康と気候変動のセミナーを先ごろ開催。メンタルへの影響、様々な体験の機会を奪うことにつながる危惧が語られた。
報告書によると、猛暑は色々な形で年齢に関わりなく人に影響をもたらし、特に子供たちや高齢者など体を冷却する能力が低い人ほど極端な暑熱に影響を受けやすい。さらに公衆衛生上懸念される様々な感染症の伝播にも影響を及ぼすなど、警鐘を鳴らす。
さらに東京大学大学院医学系研究科国際保健政策学教授・橋爪真弘氏は「無視できないのがメンタルヘルスへの影響」と言う。日本のデータでは、気温が上がると自殺のリスクも上がることが疫学研究で分かり、気温による自殺者数は今世紀末には6.5%程度に上昇してしまうといった報告もある。
さらに気象変動による洪水、山火事、熱波などの自然災害が増えることで直接的な影響の他にも災害後のPTSD、不安と抑うつといったような影響があると語った。
東京大学大気海洋研究所准教授・今田由紀子氏は自身の経験をまじえ「実際この暑さが非常に危険だと感じたので、子供はなるべくその暑さにさらさないようにしようと考えてしまった。ただ守る余り、色々な経験を積む教育やアクティビティのチャンスの損失がすごく大きな問題だと感じた」と振り返った。
東京医科歯科大学国際健康推進医学分野教授・藤原武男氏は「なぜ子供が気候変動において脆弱なのか」をさまざまな文献から解説。①基本的に代謝のメカニズムが未発達なので体が対応しきれない、②非常に感受性が高く成長する時期に大事な、遊びの機会が損失されるリスク、③体重あたりのエネルギーの消費量が多い、④外遊びで外気の気温に触れる機会が多くなるなどのポイントを指摘した。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2024年6月17日号掲載