小学校低学年でおねしょをする子供はクラスに3~4人いる一方、受診・治療を受けさせる保護者は少数とみられることから、早期の治療で改善する可能性が高いこと、また子供の自尊心等へのケアを大切にしてほしいと呼びかける「夜尿症啓発セミナー」が、6月3日からの「世界夜尿症ウィーク」にちなんで開催。「治療可能なおねしょ、『夜尿症』との付き合い方を考える」と題し順天堂大学医学部附属練馬病院小児科科長・大友義之教授が講演した。
セミナーでは他に「おねしょが子供の自尊心に与える影響、夜尿症患児の自尊心向上のためにできること」と題して(一社)スクールセーフティネット・リサーチセンター代表理事・田村節子氏の講演も続いた。フェリング・ファーマ㈱、キッセイ薬品工業㈱の共催で行われた。大友教授の講演抄録は以下の通り。
◇
2歳ごろまでの乳幼児は排尿習慣の自立前であるため、反射的な排尿として「おねしょ」をするが、その頻度は成長とともに減っていく。一般的に4歳位からは自立した排尿ができるようになり、「おねしょ」をしなくなる。この「おねしょ」の中で治療の対象となる「夜尿症」については、「5歳以降で月1回以上のおねしょが3か月以上続くもの」と定義されている(夜尿症学会「夜尿症診療ガイドライン」)。
夜尿症がある子供の割合は5歳で15%、7歳で10%、15歳以上でも1~2%に夜尿症があるといわれている(同)。小学校1年生においては1クラスあたり3・5人いる計算になる。
しかし日本の小学校低学年の子供は、夜尿症であっても受診していないことが多いといわれている。夜尿症は自尊心やQOL(生活の質)にも影響するとの調査報告もあり、気にしていない様子でも、繰り返されるおねしょによって、子供の自尊心は低下している恐れがある。
夜尿症による養育者への影響もあり、2019年にフェリング社が実施した調査によると、「最近1か月以内で、朝、子供を叱ったことがある」養育者の21%が、叱った理由として「おねしょをするから」と回答し、5番目に多かった。その反面、おねしょをした子供への接し方に悩む親も多く、「おねしょを理由に叱ったあと後悔しましたか?」の質問には、叱った養育者の約77%が「後悔した」と回答した。
一般的に夜尿症は成長とともに自然に治癒する。しかし「おねしょ」が1週間に3回以上ある場合は、3回未満と比べて自然に治りにくいといわれている。医療機関での受診、治療開始の目安としては小学校1、2年生でほぼ毎晩「おねしょ」がある場合、小学校3年生以上で週数回以上の「おねしょ」がある場合とされている。
夜尿症の治療を行うことで、治療開始から半年後までに80%の子供で症状が軽快したとの報告がある。治療後2年で治癒した子供は75%以上と報告されていることから、早めに治療することで治癒率が高いとの報告もある(池田裕一:Prog Med.37(2):231-235,2017)。
夜尿症の治療について、生活改善のみでも1~2割は治る。早寝早起きや、規則正しい生活をし、夕食後から寝るまでの時間を2時間程度あけるなどの生活や習慣を改善することに取り組むことが大事。また治療方法は患者によって様々であり、年齢や症状に応じて医師が選択する。
ポイントは、①おねしょは本人の性格や家族の育て方とは無関係であること、②焦らない、怒らない、比べない、ほめること。つまり治療の第1歩として患者に寄り添うことが大切とされる。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2024年6月17日号掲載