各自治体には専門的に教育行政に関わる弁護士「スクールロイヤー」への相談体制の構築が求められているが、相談体制があるのは都道府県、指定都市で8割以上だったが、中核市は6割強、市町村は1割に止まっていることが文部科学省の調査で分かった。相談内容では「保護者からの苦情」、「いじめ」に関する事柄が多かった。また相談は「教委の事前了解を得て学校が直接相談」できるという手順が多かった。
調査は2022年度間の全国の教育委員会の現状。スクールロイヤー(SL)の設置は、学校の働き方改革の一環で提言されたもの。学校や教育委員会への過剰な要求や学校事故への対応等の諸課題について、法務の専門家への相談を必要とする機会が増加したことから、自治体の顧問弁護士等とは別に専門的に教育行政に関わる人材として、各自治体・教委に配置が求められている。
SLに相談できる体制がある自治体は都道府県で83%、指定都市で80%、中核市で64・5%、市町村は11・3%。市町村の未整備が目立つが、SL以外の弁護士(自治体の顧問弁護士等)への相談体制は88・5%の市町村で構築されている。
現在はSL未整備でも今後の配置を検討している自治体数は、都道府県4、指定都市3、中核市6、市町村96。そのうち46自治体が今年度中に配置予定、63自治体は来年度以降の配置予定としている。またSL配置予定のない中核市、市町村で最も多かった理由は「自治体の顧問弁護士で十分対応できるため」、次いで「予算確保が難しいため」だった。
SLへの相談内容で、全体で最も多かったのは「保護者からの過度な苦情や不当な要求(例=過剰な苦情、脅迫を伴う要求)への対応」、「保護者からの苦情や要求(例=書面での回答要求)への対応」など、保護者対応が占めた。また「いじめに係る対応」も少なくなかった。
学校・教委からSLに相談する手順で都道府県、指定都市、中核市が最も多かったのは「学校管理職、又は教職員が教委の事前了解を得て直接相談できる」、市町村は「学校からの依頼を受けて教委が相談をする」だった。「学校管理職又は教職員が教委の特段の事前の了解なく直接相談できる」のは少数で、都道府県・指定都市が共に1件、中核市6件、市町村は26件だった。相談手段はいずれの自治体でも「対面」が最も多く、「電話」、「メール」の順。都道府県のみ「オンライン」が「メール」を上回った。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2023年11月20日号掲載