おいしいと感じる料理は、どちらかというと茶色いイメージになりがちです。特に和食献立の場合、調味料の基本である塩、しょう油、味噌といった塩味の有るものは仕上がりが褐色系に、また、砂糖やみりんもメイラード反応の結果、濃い目の仕上がりになります。
そのような時の撮影で配慮する点を幾つか説明します。和食では似た色合いが隣り合って盛られることが多いのですが、光の種類や当て方で印象は変わります。
被写体がスマートフォンやカメラの側から光を浴びている状態を「順光」といいます。全体に光が当たり明るい写真になります。しかし、撮影している人の影が映りこみやすくなるため、注意が必要です。
一方、被写体が後ろから光を浴びる状態を「逆光」といい、器の手前に影ができ食材の凹凸がはっきりした写真になります。また真横から光を浴びる状態は「偏光」(サイド光)といい、影は真横にでき立体感のある写真になります。
プロのカメラマンは逆光や「斜光」(順光と偏光の特徴をあわせもつ斜め手前からの光)で撮影をすることが多いようです。斜光や「半逆光」(逆光と偏光の特徴をあわせもつ斜め後ろからの光)を利用すると、奥行きのある写真を撮れるようになります。
光の調整とともに、ランチョンマットやテーブルクロス、天板といった小物の色を反対色や補色の効果を考えて利用するとおいしそうに見えます。季節に合わせた色合いを使用することも効果的です。これからの季節には温かみのある色を使うと良いでしょう。
光の種類には自然光と人工光があり、室内で撮影する場合でも、窓から差し込む太陽光は強い光を作り出す自然光になります。強すぎる時は、薄手の布やカーテン等で遮って撮影します。照明やストロボといった人工光を使用することもありますが、同時に使用することはありません。光の当て方や小物の使い方をいくつか紹介します。
和食の焼魚の献立の事例です。手前から光が当たっていると魚の後ろに影が出来ます。逆光だと器の影が手前にでき、秋の献立を見ていただくとよくわかると思います。サイド光は器や食材の左右に影ができ、広がりを感じる画像になります。
テーブルに直に置いた場合より、ランチョンマット等を敷いた方が温かみや柔らかさが生まれます。その他、箸や飲み物等を添えると、またイメージが変わって見えます。器に色柄があったり、形に特徴があれば、おもしろい画像になりますからチャレンジしてみてください。
【著者】澤坂明美=管理栄養士。女子栄養大学香友会と業務提携し『プロカメラマンとフードコーディネーターに教わる料理写真講座』を継続開催、女子栄養大学認定料理教室等を主宰する。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2023年10月16日号掲載