コロナ禍による渡航制限で2019年度は1500人まで激減していた海外留学生((独)日本学生支援機構調査)は、その後のワクチン接種支援事業や、今後10年間で高校生の海外留学12万人とする政府目標などで少しずつ増加傾向にある。これらを背景に文部科学省は先ごろ「高等学校等における海外留学に関する危機管理ガイドライン」(ガイドライン)を作成。学校・教委、生徒・家庭がそれぞれに留意するべき安全管理のチェックリストなど実用的な内容となっている。
留学生数は2018年の11万5146人がピークで、19年は10万7346人に減少し、コロナ禍の20年は1487人だった。しかし21年は1万999人になり、今後は高校生の国際交流を加速させる政府目標などを背景に、増加が予想される。
ガイドラインは既存の学校の危機管理マニュアルを土台に、国外での事故、怪我、疾病、盗難、自然災害などの様々なリスク(以下「事故等」)を想定し、未然に防ぐことを含めその対処法を具体的に述べている。海外留学を中心に記載しているが、研修旅行や修学旅行等で学校の教育活動の一環として渡航する場合も参考にできる。
また、昨今の治安情勢や新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大などの状況をみると、危機事象を予見して回避することが難しいことから「学校において、留学前に安全への意識啓発や危機管理体制の整備など、事故等に関する未然防止の取組を十分行うことが必要」と指摘。「安全教育では、いかなる状況下でも生徒が自ら考えて判断できる能力を育てていかなければならない」と「安全教育」の目的を述べている。
巻末には「トラブル等の事例と対策」、「学校等が確認しておくべきチェックリスト」、「生徒自身が確認しておくべきチェックリスト」等、具体的で役立つ情報が掲載されている。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2023年10月16日号掲載