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学校施設

第98回【教職員のメンタルヘルス】MHCの巡回相談を活用しよう

2023年10月16日
連載

前回では、学校現場にメンタルヘルスカウンセラー(MHC)の存在や役割を浸透させるための具体的な取組についてお話ししました。今回はなぜ巡回相談にこだわるのかについてお話をしようと思います。

学校現場の人材不足については、様々な報道機関を通して語られています。最近の欠員を生じている学校では、教務主任や教頭はもとより、校長自らが授業を行っている例も散見されます。特に小学校では、授業を担当している教務主任や教頭等は子供たちが下校するまでは自分の仕事に取りかかれません。夕方からようやく仕事に取りかかるために、毎日遅くまで人一倍の仕事量をこなし、土日も学校に来て残った仕事を消化している教頭もいるほどです。こんな現状では教頭のなり手が年々減っているのも頷けます。

働き方改革が学校現場に求められています。現在の教員不足や教職についての不人気への解決策としては、仕事の絶対量を減らすか人を増やすかしか解決策がない、というところまで学校現場が追い詰められているのです。このように各自が少しずつ無理を重ねている状況下では「しんどい自分」を吐露することが困難になり、職員室全体が重苦しい雰囲気になりがちです。そんな職員室にMHCが訪問し、教員に寄り添い「ガス抜き」をして差し上げるのです。

■話を最後まで聞く

「寄り添う」という言葉を耳にすることがあると思いますが、これが一番難しい。なぜなら、人間にはその人独自の価値観を持って相手の話を聞く傾向があるからです。しかし自分の話を最後まで聞いてくれるMHCの話は、相手も聞いてくれるようです。

職場で休職者が一人発生すると、引き金となり休職者の連鎖が始まることがあるので注意が必要です。まして、年度当初から担任が不足の状態でスタートした学校では、自分が休んだら学校が回らなくなることを教員自身がわかっていますので、自分だけが「休みます」と言い辛く、一人で悩みを抱え込みがちです。

「子育て介護は行く道来た道、困ったときはお互い様」の職場風土をいかにして醸成していくかは、文字通り学校長の手腕にかかっています。年度末に「この職場で1年間みんなと一緒に働けてよかった」と思えるかどうかは管理職と職員が同じベクトルを向いているかで決まります。

■早期の連絡が有効

巡回相談の成果は校長の連絡のタイミングに左右されることが多いのです。教職員の中に例えば、①最近、遅刻や早退が多い、放課後に職員室にいることが少ないなど、いつもと違う様相を呈している段階でMHCに連絡する、②23日学校を欠勤している段階でMHCに連絡する、③学校を1週間前から欠勤している状態のときにMHCに連絡する。MHCは①の段階で連絡してくれることを一番期待しております。連絡が速すぎて症状が悪化することはありません。

■養護教諭の存在感

①の段階で大きな役割を果たすのが養護教諭です。管理職とは違った視点で現状を心配する養護教諭からの連絡は、時として早期発見、早期治療に貢献することが多いのです。そのためにも学校訪問の初回には、管理職と並んで養護教諭との顔合わせを大切にしているのです。同じ「知っている」という言葉でも、実際に顔を合わせて知っている場合と電話で知っている場合とでは、「繋がり」という意味での距離感が違います。保健室に時々顔を出す教員もいます。保健室において養護教諭との何気ない会話から異変を感じる感性を持っている養護教諭がたくさんいらっしゃいます。普段は職員室にいることが少ない養護教諭が、時々顔を出した時に感じる一種の違和感などに助けられたことが何度あったでしょうか。


土井一博(どいかずひろ)=順天堂大学国際教養学部客員教授

教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2023年10月16日号掲載

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