「居眠り程度」と軽く考えがちな子供の居眠りだが、学校での頻繁な居眠りは体調不良や情緒不安定など、発達途中の子供の心身に深刻な影響を与えるサインの可能性もあるため、軽視できない……アキュリスファーマ㈱が9月3日「秋の睡眠の日」にちなんで実施した意識・実態調査と、その結果を踏まえて行われたメディアセミナーで日本睡眠学会理事長・内村直尚医師は、睡眠の大切さについての教員や保護者の正しい理解を求めた。
セミナーは「`うかうか‘してはいられない!日中の`うとうと‘」と題して8月31日、都内で開催された。子供の睡眠に関する意識・実態調査結果と、これを踏まえた久留米大学学長で日本睡眠学会理事長・内村直尚医師による講演「睡眠実態調査から見える子どもたちのSOS」などが行われた。
睡眠実態調査は小・中・高校の教員600人・計1800人、各学年の保護者100人・計1200人を対象に8月上旬に実施された。
授業中に居眠りする子供が「よくいる」「たまにいる」を合わせると、全体で79・2%(小65・5%、中83・6%、高88・5%)に上った。
生活状況について、居眠りを指摘された子供(有)と指摘されたことがない子供(無)で比較すると、「夜と昼が逆転する」が「無」では5・1%だったが「有」では61・1%で12倍、「友達をたたいたり暴言をはいたりすることがある」は「無」が4・6%に対し「有」は50・0%で約11倍、「朝起きられず学校に行けないことがある」は「無」の4・9%に対して「有」は44・4%で約9倍だった。
居眠りしている子供の保護者に、面談などで伝えている教員は、小学校で6割以上、中学校が4割、高校は2割。指摘された保護者は「子供と話し合った」(36・7%)、「スマートフォンやゲームの使用時間を決めた」(22・2%)などの対策を行った一方、4割近い38・9%の保護者は「特に何もしなかった」と回答。背景には居眠りについての軽視、対策が分からないことなどが原因にあると考えられる。
内村氏は子供にみられやすい睡眠障害について次の通り、①閉塞性睡眠時無呼吸、②睡眠・覚醒相後退障害、③ナルコレプシー(過眠症)、④睡眠不足症候群、⑤神経発達症(発達障害)、という5つを提示。
睡眠時無呼吸症候群は上気道の狭窄で空気の流れが悪い、又は流れない状態。肥満、アデノイド肥大、下あごの発育不全などが主な原因。成長ホルモンや食欲低下による身体発育の遅れ、脳機能発育への影響(学業成績低下、キレやすい)、生活習慣の乱れなどの影響が考えられる。
ナルコレプシーは睡眠発作(会話中、食事中、歩行中にも眠る)、睡眠麻痺(睡眠と覚醒の移行期に起こる、眼が覚めているのに動いたり話したりできない`金縛り‘)、不眠などの状態。10代で発症し有病率は0・2~0・6%。ナルコレプシーの知名度は低く、保護者の7割近くが「聞いたこともない」と回答。教員でも「聞いたこともない」が53・7で半数以上に上った。
子供が十分な睡眠をとるためには運動量を増やすことなど、「子供が夜ぐっすり眠るための生活リズム10か条」=の図表=を紹介した。十分な睡眠や運動を心がけるなどの基本的な生活習慣を守ることが大切だ。