いじめの問題は、一人ひとりが自分事として考えることが大切…昨年第16回を迎えた「いじめ防止標語コンテスト」(主催:いじめ防止標語コンテスト実行委員会、後援:文部科学省ほか、協賛:AIG損害保険株式会社<以下「AIG損保」>)。毎回40万点以上の応募があり、この問題を啓発する取り組みとしてすっかり定着した。同実行委員長の林原麻里子氏(AIG損保執行役員兼広報部長)とAIG損保の傷害・医療保険部個人商品企画・推進課課長兼スクールビジネスグループリーダー・岩岡伸樹氏にコンテストの意義などを聞いた。
岩岡「企業や個人のリスクを減らし、その安全安心に貢献することを目指すAIGの考え方が根底にあります。そこから発展し、児童生徒が健全に育つ環境作りや保護者や先生方が安心できる学校作りに貢献したいとの思いから、コンテストがスタートしました」
林原「AIG損保は保険会社であるだけでなく社会課題を解決できる企業を目指しています。その課題の一つが、子供たちを守ることであり、いじめを防ぎ、子供たちの未来を育むという取り組みに共感し、協賛してきました。子供たちが不安を感じることなく、生き生きと学ぶことのできる学校生活を応援したい、との願いです」
林原「応募された標語に目を通すと、その年によって顕著な傾向があり、作品は世相を表していると感じています。最近は、『人と違うことのどこが悪いのか』と訴えるなど強く主張する作品も増えてきたように思います。多様性や個性の大切さの認識が広がっているのかもしれません」
岩岡「SNSでの中傷のようにデジタル世界で書き込まれた言葉で傷つついた、書き込む前に相手の立場になって考えようなど、時代を反映したワードが多かったという印象です。学校で面と向かって行われるものだけがいじめではなく、学校の外でも休みの日でも起こりえることに子供たちが強い問題意識を持っていることを感じました」
林原「確かに、その認知度は上がっているように感じています。『いじめは悪い』『いじめをしてはいけない』という単純な議論ではなく、標語作りをいじめについて考えるきっかけとしてほしいという思いがあります。今では、『何がいじめにあたるのか』、『何をされたらいやな気持になるのか』など、学校やご家庭で、いじめの定義などについて話し合う機会になっているようです。標語を作って応募するだけでなく、そこに至るプロセスも含めて、コンテストに参加する意義だと考えています」
岩岡「団体で参加しているあるPTA県協議会では、各学校の授業の一環としてコンテストに参加しており、『いじめを防止するために何が出来るかを皆で考え発信しよう』ということのきっかけになっていると聞いています」
林原「コンテストを通し、16年にわたって、いじめについて大人と子供が話し合う機会を提供することができました。継続して参加してきた学校には大きな力になったと思います。毎年、2000校以上の学校から40万点以上の作品が寄せられます。それだけ、関心の高いテーマということなのでしょう。一人ひとりのいじめに対する意識が高まったことが、応募が増えている要因と考えられます」
「今後も継続して大人と子供に対話の機会を提供していきます」
岩岡「AIG損保はいわゆる『いじめ保険』と呼ばれる『こども総合保険 トラブル被害対応補償特約』を昨年2月から販売しました。ただし、この保険はトラブルが起きてしまった後のサポートです。AIG損保は、トラブルを未然に防ぐリスクコンサルティングにも重点を置いています。コンテストでは子供一人ひとりがいじめ防止のため、言葉や書き込みを発信する前に振り返り、考えるきっかけの役割を果たしています」
「私たちはコンテストによる予防と保険による補償を通じて、いじめ問題に真剣に取り組んでいます」
林原「いじめは子供たちだけの問題ではなく、学校や家庭、地域の問題でもあります。大人も同様でどんな社会になっても、どんな国でも、まだまだ完全にはなくならない難しい問題です。どんなに小さなグループでもいじめの問題は発生します」
「いじめ防止に向けて、学校として何をすべきかを考え、いじめを絶対に許さないという『ゼロ・トレランス(許容しない)』の体制を、どう構築すべきかを考えていただければと思います」
AIG損保が協賛する「いじめ防止標語コンテスト」は、いじめ防止標語コンテスト実行委員会とPTA団体の共催で文部科学省が後援。全国小・中学校の児童生徒を対象としており、個人・団体として「いじめ」について考えたり話し合ったことを「標語」として応募するもの。
昨年度第16回コンテストでは43万4500点余りが応募。教育関係者による予備選考を経て、文科大臣賞(2点)、全国賞(34点)などが選出された。
発表されているコンテストの審査基準は▽「いじめ防止」を目的に書かれた作品であること▽「いじめ」を他人事化せず、自分たちの問題として捉えられている作品。