お店で頂く野菜炒めは配膳された時はシャキッとしています。でも、すぐに食べないと徐々にしんなりしてしまいます。料理写真の撮影も同様です。炒めた後の余熱が、影響しています。撮影のテクニックも大切ですが、その前に調理方法を見直してみませんか。
野菜炒めの作り方を振り返ってみましょう。まず、野菜の種類と固さに合わせた下処理が大切です。火の通り具合や、それぞれの野菜の厚み等、気にすべきことが多々あります。
一般家庭で調理した野菜炒めは、火力があまり強くないのでベタっとした感じになりがちですね。でも野菜の特徴を知り、切り方を考えて、順番をきちんと守って炒めると、ビックリ。シャキッとします。それには野菜の持っている水分を如何に上手く逃しながら、閉じ込めるかです。
例えば、回鍋肉。この中華料理は豚肉とキャベツの辛味みそ炒めです。下ごしらえは、豚肉をサッと茹で、大きめの一口大に切ったキャベツとピーマンは160~180℃の揚げ油で5~8秒サッと揚げるか、たっぷりの湯に大さじ1~2のサラダ油を加えて揚げ油と同様にサッと茹でてすぐザルにあける。野菜の周りに油をコーティングすることで必要量の水分を閉じ込め、シャキッと仕上がります。
大量調理の場合は、中心温度を75℃以上にしなければならないので、手順をしっかり守る必要があります。調味料を全て混ぜ合わせ、温めて豚肉と野菜を軽く混ぜ合わせ、すぐに盛り付ければ出来上がりです。
撮影する時に大切なことは、出来上がった料理をすぐに器に盛る事です。調理器具の中に入れたままにすると、余熱でしんなりしてしまいます。前回(汁ものの撮影)で説明した、底上げ網を下敷きにしてふんわり盛り付けると、より美味しそうに撮影できます。
更に、撮影は引き算のコツをいかし、本来の料理の魅力やシズル感(みずみずしさ)を切り取って写してください。撮りたいものや見せたいものから、それ以外の余分なものを差し引く。これは、見えているものをもっとよく見せるため、食器の位置や中身の食材を移動したり、取り皿や調味料等をよけて撮影することです。またスマートフォンやカメラの持ち方でも変化が現れます。横にして持つ(横位置)と、よりリアルな感じに、縦にして持つ(縦位置)と奥行きが出てきます。
構図やアングルや配置を変え、カメラ等機器の機能を理解して何回も撮影してみると、美味しそうで食べたくなるような写真が撮影できるようになります。
【著者】澤坂明美=管理栄養士。女子栄養大学香友会と業務提携し『プロカメラマンとフードコーディネーターに教わる料理写真講座』を継続開催、女子栄養大学認定料理教室等を主宰する。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2023年9月18日号掲載