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2023学校給食セミナー 給食の課題を冷凍食品で改善

2023年9月18日

(一社)日本冷凍食品協会と㈱教育家庭新聞社は共催で「2023 学校給食セミナー」を8月22日、「栄養教諭の資質向上と冷凍食品の活用でより豊かな献立を」をテーマに静岡県静岡市の静岡県男女共同参画センター・あざれあを会場に、オンラインを含めたハイブリッドで開催した。(公社)全校学校栄養士協議会長・長島美保子氏の基調講演「栄養教諭に求められる職務と役割~冷凍食品の活用が課題解決の一助に」、藤枝市中部学校給食センター栄養教諭・池谷綾子氏の実践報告、冷凍食品メーカー8社のプレゼンテーションと試食、質疑応答などの内容で、会場とオンライン合わせ約100人が参加した。

【基調講演】
公益社団法人全国学校栄養士協議会 会長 長島美保子氏
指導と管理で相乗効果に期待

長島美保子氏

長島美保子氏

基調講演は「栄養教諭に求められる職務と役割~冷凍食品の活用が課題解決の一助に~」を演題に、全国学校栄養士協議会会長の長島美保子氏が登壇。講演の要旨は以下の通り。

2022年に文部科学省は「養護教諭及び栄養教諭の資質能力の向上に関する調査研究協力者会議」を立ち上げ、全5回の議論を経て231月に取りまとめた。それを踏まえ、これからの栄養教諭のあり方が示された。同会議で、栄養教諭は学校給食の管理に関する業務に比重が置かれ、本来の役割が果たせていないと指摘された。

学校内における栄養教諭の認知度も低く、児童生徒から頼られる存在となっていないと指摘。こうした状況を改善するため、栄養教諭の職務の重要性や任用・配置による効果などが認知されることが不可欠。児童生徒から頼られる存在となるため、栄養教諭を配置した効果が周りから認知される取組が大事だ。

課題として、職務内容や伸ばすべき能力についての認識が統一されていないこと、個別指導への力の入れ方にバラつきがあり十分な個別指導が行えていない現状がある。食物アレルギーをはじめ児童生徒の食の課題が多様化する中、個別指導の重要性の認識浸透や栄養教諭の個別指導力の向上が喫緊の課題だ。

栄養教諭の職務には、食に関する指導と学校給食の管理を一体として行うことで高い相乗効果が期待される。食に関する指導では、給食の時間に教室で行うほか、教科における指導にも参画し、健康課題のある児童生徒の個別的な相談にも対応する。学校給食の管理では学校給食実施基準に基づいて給食を教材とするための献立作成を進めるほか、同基準に基づく衛生管理を進めること。

文科省は「食に対する課題対策支援事業」を23年にスタート。この事業は各都道府県の実践校で指導体制やノウハウを確立し、具体的な取組を展開。そして、好事例を全国に発信する。現在、各学校で具体的な取組を進めている。

同事業では偏食・肥満・痩身・食物アレルギーなど食に関する健康課題がある児童生徒が増加傾向にあるため、栄養教諭は児童生徒の食に関する課題に責任を有する立場として、専門性を活かして課題の改善を進めるとともに計画的・継続的な関わりが求められる。

食育基本法に伝統的な食文化が明記されたことを受け、冷凍食品が教材として果たす役割が注目される。学校給食で活用するうえでは、①豊かな献立作り、②安定した調達が可能、③調理時間の短縮、④献立調理業務の効率化につながり食に関する指導の時間を確保できることなどがメリットとして挙げられる。

調理作業の効率化を図り、献立内容を豊かにすることができる。また、鉄分や食物繊維など不足する栄養素を補うことも可能。さらに活用の仕方によって、食材のロスを防ぐことや豊かな食文化や行事食への対応も考えられる。

冷凍食品に対する正しい理解を、栄養管理者だけでなく給食関係者が共有することが重要で、教員や保護者への周知と理解を図り活用のメリットを広く知らせることが大切。メーカー担当者とのコミュニケーションを図り、給食現場の希望を伝えることも必要である。

【実践発表】
静岡県藤枝市中部学校給食センター 栄養教諭 池谷綾子氏
地場産物活用した献立提案

池谷綾子氏

池谷綾子氏

静岡県藤枝市中部学校給食センター栄養教諭の池谷綾子氏は実践発表として「学校給食における冷凍食品の活用について」をテーマに事例を紹介した。発表の要旨は次の通り。

冷凍食品を給食に活用する効果は、①調理作業の簡略化、②献立の多様化、③安定した価格での食材提供、④衛生管理された食材、⑤地場産物の活用促進、⑥食が楽しみとなる工夫ができることの6点が挙げられる。

調理作業の簡略化として、生の状態から処理をすると時間がかかるホールコーンや里芋など、処理された素材を使用して効率化している。これにより大量調理に使用するには難しい食材も、献立に取り入れられる。

献立の多様化については、複雑な工程が必要な献立は給食時間に間に合うように作業工程や作業量を考慮する必要があるので、冷凍食品を活用することで献立の幅が広がる。例えば、すでにペースト状になっているコーンを活用することでポタージュなども献立に取り入れることができる。

試食会場は参加者とメーカーが情報交換する場に

試食会場は参加者とメーカーが情報交換する場に

安定した価格での食材提供については、旬や天候などの理由により価格が変動する生鮮食品に対して、冷凍食品の価格は年間を通じて安定している。冬場が旬のホウレン草は、夏場には価格が2倍程になるため、夏場は冷凍食品に切り替えて提供することがある。

衛生管理された食材の使用については、例えば鶏レバーは衛生的に下処理をする場所を確保することが難しいが、処理された冷凍の鶏レバーを使用することで献立に取り入れることができる。冷凍食品はマイナス18度以下で管理されているため、細菌が増殖することがなく衛生的であるというのも利点だ。

地場産物の活用促進については「抹茶鬼まん」「白身魚のお茶フリッター」「抹茶わらびもち」など、藤枝市産の地場産物であるお茶を取り入れた冷凍食品を製造してもらうことで学校給食に提供している。また、児童生徒が考えたリクエスト献立を月に数回取り入れているが、藤枝市産のしいたけを刻んで具とした冷凍コロッケの例もある。給食センターで手作りのコロッケを提供することは作業量を考えると難しいため、業者に要請して検討しながら作成していった。

食が楽しみとなる工夫として七夕の献立に冷凍食品を活用した例をみると、子供たちが楽しみながら給食を食べられるように星型のナルトやゼリー、天の川に見立てた魚麺を使用して七夕献立を提供した。

冷凍食品を学校給食に使用することで、作業内容や価格の面などからも多くの効果がある。生鮮食品と冷凍食品のそれぞれの良さなどを考慮し、状況に応じて冷凍食品を活用することで豊かな献立につながる。

【質疑と意見交換】
アレルギー対応の食品が増えている

午後からの質疑応答・総括では長島会長、池谷栄養教諭が登壇。日本冷凍食品協会・三浦佳子広報部長が進行しWebで全国から寄せられた質問にも答えた。

Q:実践報告で紹介されたヒスタミン検査は、どのような品目・頻度で実施していますか。

池谷:カツオや肉など日ごろ心配な品目について、改めて確認することも大切と考え、市の衛生管理に関する予算の範囲内で行っている。事前に「検査の結果が欲しい」と伝えれば、検査費用も含めた見積を出す納入業者もある。

Q:食物アレルギー対応に関して、冷凍食品であれば、小ロットで提供できますか。

長島:今回の試食会場でもアレルギー対応食品の紹介があった。小袋の120㌘や、1キロ㌘というのも見せて頂いた。

三浦:ロットの問題は卸業者に、納入の個数など購入の際の条件などを相談してほしい。アレルギー除去食品はとても種類が増えていて、メーカーが3大アレルゲンを使わず、小麦粉の代わりに米粉を使う、卵を使わずに豆で卵のような風味をつける等の工夫をして、さまざまな冷凍食品で提供されている。子供たちがみんな一緒にデザートが食べられる、といったことも可能になっていくのではないか。

Q:冷凍食品の適切な解凍方法や、解凍してからの賞味期限がわからないことがあります。

三浦:適切な解凍方法は製品の袋の裏に記載されており、調理の仕方でも変わることがあるので参考にしてほしい。冷凍食品は加熱調理が基本。パッケージを開けたら再凍結は絶対に避けて頂きたい。

池谷:製品の袋の裏の解凍方法に準じることを第一にしつつ、私も日々試行錯誤しながら活用している。本センターでは焼物機を使っているので、魚は冷凍のままだと内部の温度が上がりにくく、事前に解凍が必要な場合もあり、前日に冷蔵庫に移して解凍してから使うこともある。

<総 括>

長島:食事摂取基準が段階的に変更され、エビデンスに基づいた摂取基準が構築され、減塩や鉄の強化、食物繊維など工夫して取り組まないと数字に届かないような面もある。メーカーがいち早く対処し、給食に取り入れられるように努力していることが分かった。

メーカーと学校給食現場がよりコミュニケーションをとることで、必要なものをきちんと開発して頂く、そうした連携が大切なのだと改めて実感した。

池谷:冷凍食品がないと今の献立などが成り立たない一方で、日頃はメーカーとなかなか話をする時間が取れない。このような機会に給食現場の考えを伝えることで、自分達の仕事の効率化にも結びつくと思う。

教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2023年9月18日号掲載

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