食卓に出される料理は、食べるとおいしいのだけれど見た目にはそうでもない、と感じることがあります。何故でしょうか?忙しさに追われ、深く考えずつい大雑把に盛り付けていませんか。いつも同じような盛り付け方をしていませんか。食器のどこに盛り付けるか考えていますか。
色々な要素が関わっています。学校給食などの集団調理では、調理から配膳まで時間との競争です。だからこそ、せっかく作ったものは盛り付ける際に少しの注意でおいしそうに見えます。
おいしさは五感で感じるものですが、写真では視覚にしか訴えられません。そこで必要になるのが「盛り付け方」です。器のどの位置にどのくらい盛り付けるかで見え方は変わります。
主菜は器の60%位を目途に盛り付け、付け合わせはメインの後方にシンメトリーに、ご飯類やパスタ等は中央に盛り高に盛り付けます。ここで大切なのは、前回お話しした撮影アングルにより、少し手前に料理を配置したり、中心に平らに盛ったりと工夫が必要です。
盛り付けには、昔からのしきたりや歴史に裏打ちされた決まり事もあるので、なかなか逸脱できないものです。しかし料理写真の場合、利用する目的に沿って少し型からはみ出すこともあり得る事と思います。最近の料理本を見ると、伝えたい特徴をうまく表現する上で、撮影方法も変化しています。
少しわかりにくいですが、下にある栄養士養成校の学生が集団調理実習で提供した、昼食献立の写真を見比べてください。上段左側のあまり考えずに盛り付けられた画像と、右側は少しだけ手直しした画像です。修正個所は、ご飯の盛り付け方と主菜の付け合わせの配置です。イラストのように主菜は器の手前半分位に盛り付け、付け合わせは後方にまとめて盛ります。ご飯はふっくらと見えるよう、押さえつけずに盛ります。
白飯と炊き込みご飯の画像を見ると、炊き込みご飯は入っている具材が分かるように目立たせて盛ってあります。一方、白飯の方は主菜が目立つようにカメラ位置を動かして撮影しています。また洋風のパエリアは、具材がしっかり、はっきりわかるように盛り付け、サラダや飲み物は敢えて少し奥の方にずらして撮っています。
おいしさを感じてもらうには、実際の料理が目の前に無くても画像から感じてもらえる工夫が必要なことがおわかりいただけたでしょうか?おいしさは五感で感じるものです。見て、聞いて、臭いで、触って、そして味わって。素敵な写真を撮ってください。
【著者】澤坂明美=管理栄養士。女子栄養大学香友会と業務提携し『プロカメラマンとフードコーディネーターに教わる料理写真講座』を継続開催、女子栄養大学認定料理教室等を主宰する。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2023年7月17日号掲載