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学校施設

第95回【教職員のメンタルヘルス】MHC活動の4つのポイント

2023年7月15日
連載

今回から、17年前より埼玉県川口市教育委員会が採用している全国初の取組、「教職員メンタルヘルスカウンセラー」(MHC)の活動全般についてのエッセンスを公開します。

目的は①川口市の取組を参考にして、それぞれの自治体の実態に合わせて、メンタルヘルス予防にトライして頂きたい、②その具体的な方法について可能な限り伝達したい、この2点です。

●川口市立学校について

(2023年現在)

▽学校数=2、小52、中27、高等学校1、併せて82校▽教職員数約2500名▽男性1名、女性1名のMHCが年間420校の学校訪問を実施している。男性1名は大学の客員教授、女性1名は認定心理師。

●MHC誕生のきっかけ

2005(平成17)当時、教員の休職者数が増加の一途で、危機感を感じた川口市教育委員会がメンタルヘルスの専門家を探していたところ、当時の主幹より、知人を介して筆者に連絡が入る(MHCの誕生)。週1回からスタートした勤務が翌年から週2回に増え、3年目になり正式に予算化されました(年間420校訪問)

円滑なMHC活動のためのキーワードは①訪問スケジュール調整、②啓発活動(撒き餌)からスタート、③第1関門は管理職の信頼を勝ち取るところから、④巡回相談にも戦略が、以上の4点です。

①訪問スケジュール調整

月に約30校を訪問する計画を立てる。そのためには月初めに40校以上の学校に電話し、空いている日を伺い、訪問スケジュールを決定する。

その際は新任校長や他市から異動してきた校長の学校には、優先的に訪問します。特に他の自治体から赴任してきた校長の場合には、市内に校長同士のネットワークがないので心細いものです。そこで「わからないことがあったら教育委員会の〇〇先生に、同じ地域の小学校の〇〇校長さんに聞くといいですよ」と情報提供をするだけで表情が違ってきます。

②啓発活動(撒き餌)からスタート

心療内科等の医療機関を受診するほど、重い症状になるまで我慢するのが教員の特徴。そうなる前に教員との雑談ができる、様々な仕掛けが必要です。

年度当初から教育委員会を通して市内の各学校に、教職員向けの「メンタルヘルス通信」を配布する。内容は子供との関係作りや保護者対応など、教師のメンタルヘルス予防の啓発に役立つものに限定。通信を配布する目的は、MHCに直接会わなくてもMHCの人となりやMHCが先生方にとって役立つ存在であるという意識付けをすること。

この通信を書いている人はどんな人なのかと思うタイミングで学校訪問をすると、警戒感や緊張感が緩和されており、雑談をする雰囲気が醸成されます。そんな中から「実はここだけの話ですが…」という本音が聞こえてくるのです。

③校長の面通しに合格せよ

巡回相談ではまず校長と面談させていただく。教員と面接するためには管理職から信頼されることが不可欠である。「この人なら安心してうちの教職員を任せられる」と思わせられるかどうか。校長のお眼鏡にかなわなかったらそれ以降お呼びがかからないこともあり、その意味で緊張感で一杯です。

④巡回相談にも戦略が

巡回の初回は校長、教頭、養護教諭等の1人職中心。2回目は初任者、異動1年目教員、臨任1年目教員中心、3回目は学校の要請が中心。特に大卒1年目の臨任教員には初任者指導教員がつかないので要注意。

さらに初めての教務主任、初めての転勤、初めての〇年担任等には話を聞くことにしています。仕事の見通しややり方がわからない場合、メンタルを悪化させやすいので要注意です。


土井一博(どいかずひろ)=順天堂大学国際教養学部客員教授

教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2023年7月17日号掲載

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