「新しい時代の保健室経営で大切なことは、もう一度基本を見直すこと。子供の健康安全には全職員が相互に連携し、養護教諭が日頃から教職員とのコミュニケーションを重ね、組織的に対応していくこと」–全国養護教諭連絡協議会第28回研究協議会が都内の会場で2月17日開催され、研究フォーラムで司会のびわこ学院大学教授・岩崎信子氏がこのように総括した。また同会は4月9日まで動画配信された。
「連携・協働を深化させた新しい時代の保健室経営のあり方を通して」をテーマに開催されたフォームは、小・中・高等学校、特別支援学校から現職養護教諭らがそれぞれの実践を発表。さらに会場との質疑や意見交換が行われた。実践発表の要旨は次の通り。
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「『教育課程全体で育成する資質・能力』を意識した保健室経営」∥横浜市立上菅田笹の丘小学校副校長・徳永久美子氏
理想の経営のため学校の教育目標や校長の中期経営方針の把握、次の実態把握と得た情報から保健室経営計画を立てて実行した。児童の実態・健康課題の把握、教職員の実態把握、保護者・地域の実態把握、学校医・薬剤師・SC・SSWの実態把握、そして「自分を認知する」ことが重要だとした。
児童保健委員会を指導し、グループで健康放送「すこやかタイム」を月毎に担当。紙芝居やクイズ、ICT機器を活用した動画等で健康情報を放送した。学校全体で「いのちの学習」の見直しが課題となり、全職員に学校全体での育成を提案。低学年での授業を担任と共に実施した。「自己肯定感」や「他者とかかわる力」を学校全体で育成する取組を継続する。
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「ソーシャル・ボンドを意識した保健室経営をめざして~起立性調節障害(OD)の事例から」∥岡山県津山市立津山東中学校養護教諭・石原亜純氏
生徒の実態把握により長欠・不登校の出現率が全国・県平均より高く、ODの診断を受けた16人中10人が長欠だったことから、ソーシャル・ボンドを意識した生徒理解に関する校内研修を計画。OD支援のため生徒本人に関わる学校、医療機関、家庭が組織支援するシステムを考えた。
そのため関係者の情報共有を目的として「学校生活についての意見書」と「面談シート」を学校医と相談して作成。さらにチームで健康相談・検討ができるよう、生徒参加型と状態変化時型との2様のケース会議を設置。現在はOD支援以外での疾病による心身不調のケースでも、同システムが活用できるという。
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「PDCAサイクルに基づいた保健室経営の実践~ICTを活用した他者評価の取組」∥群馬県立下仁田高等学校養護教諭・中嶋由佳里氏
PDCAサイクルに基づく保健室経営を実施してきたが、他者評価は聞き取り中心で教職員と一分の保健室利用生徒に限られていた。しかしICTを活用することで、全生徒を対象にペーパーレスでのアンケートが可能に。校内Wi-Fiを利用しWeb上に用意したアンケートフォームからの回答を可能にした。ICTの活用により回答と同時に自動集計ができ、生徒側はフォーム上の入力に慣れているため、スムーズに取り組めた。
一方で実践の裏側には、ICTを活用しやすい校内組織体制の整備、ICT活用に慣れている教員からの教示・支援など、教職員の理解と連携協働があって実現したことだと言う。
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「養護教諭の連携・協働を生かしたチームとしての充実した取組を目指して~実践の振り返りと‘資質の向上に関する指標(育成指標)’を活用した保健室経営」∥埼玉県立越谷西特別支援学校養護教諭・渡邊登志子氏
埼玉県が作成した「教員等の資質向上に関する指標【養護教諭】」にあてはめ、新しい時代の保健室経営を考え、勤務経験(ステージ)と共に連携が深化し、校内、地域、他機関との協働が進展する。主な取組例では、感染症対策として「感染症やっつけよう週間」を計画・実施。学校医等他の機関から指導助言を得て消毒など環境を整備し、全職員が協力して下校時の一斉消毒に取り組んだ。授業・活動中の対策は全職員で対策マニュアルを作成した。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2023年4月17日