「創エネ」と「省エネ」によって年間の一次消費エネルギー収支をゼロとする学校施設のZEB化には、エネルギー削減だけでなく環境教育の見える教材、災害時のエネルギー確保などのメリットも多い–文部科学省の専門家会議が先ごろ公表した「2050年カーボンニュートラルの実現に資する学校施設のZEB化の推進について」(報告書)はZEB化の効果を上げ、実現のために段階的・計画的なZEB化を提案する。
文科省の学校施設の在り方に関する調査研究協力者会議は昨年3月まとめた「新しい時代の学びを実現する学校施設の在り方について」で、エコスクールの取組の深化、学校施設のZEB化や木材利用の推進を提言。さらにワーキンググループが同報告書をまとめた。公立小中学校のZEB化を推進するための視点、既存施設ZEB化の手法、計画的な推進等について提言する。
ZEBとはNet Zero Energy Buildingの略で、快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建築物。断熱や空調の効率化等の省エネにより消費エネルギーを減らし、太陽光・風力発電等自然エネルギーで創るエネルギーとの収支がゼロを目指す。
国土交通省によると公共施設に占める教育施設(幼稚園、学校)の割合は4割を占め、保有する面積の4割が築40年以上の老朽施設。省エネの効率が低いことから、ZEB化の取組が必要だとする。環境省の試算では学校施設のエネルギー消費比率は、空調が41%、照明が36%を占め、両者で8割近く。断熱・空調・照明設備の効率化が急がれる。
報告書はZEB化のメリットを、①快適性・生産性の向上②防災機能強化③環境教育への活用④光熱費の削減など4方面から提案。既存学校施設のZEBシミュレーションでは、単位面積当たりの一次エネルギー消費量は822から410へと50%削減された。
ZEB化推進の基本的な考え方は、①快適で健康的な室内環境の確保、②学校施設の環境教育への活用、③建物のライフサイクル全体を通じたCO2排出量の削減(断熱化・日射遮蔽等の建物性能の向上、設備機器の高効率化、太陽光発電等の導入、施設の木造・木質化)、④災害時の利用も見据えた防災機能強化(室内環境の向上による避難住民の生活環境向上、再生可能エネルギーや蓄電設備の導入で避難所機能の継続に有効)。
推進の具体策として報告書は①新増築等でのZEB化、②改修時のZEB化について、それぞれ基本的な考え方を明記。①では漸進的なZEB化を提案、②では域内の複数の学校施設に対して、費用対効果が高い取組から段階的・計画的に整備することを提案。一括発注により複数校が同時に改善できると共にコストダウンの効果も期待できると示唆する。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2023年4月17日号掲載