スマホネイティブ世代が母親となり、子供は2歳で過半数がスマホを使用。1人1台端末で授業はネット活用が日常的な今日、ネットは欠かせない存在。その一方で教師や親にとってネットいじめは見えにくく対策には困難が多い。2月17日の全養連大会特別講演では兵庫県立大学環境人間学部准教授の竹内和雄氏が、教師から分かりにくいネットと子供たちの現状だが、「ネットは危険だ」と切り捨てるのではなく知ろうとする姿勢が大切だと語った。
竹内氏らが2014年に大阪市内の養護教諭にアンケート調査で「毎日の教員生活が楽しいか」尋ねたところ、年代が上がるほど「楽しい」の回答が減り、20歳代の47・3%から50歳以上は10・8%だった。なぜ年齢が上がるほど疲れているのか、多かった理由では「子供が分からなくなった」というもの。多くの子供がスマホを使い「LINEと言うが分からない」と答えたという。
「調査は約10年前だったが、今日では様々な問題の中心にスマホがある。例えば不登校の生徒はネットいじめが切っ掛けにある一方、不登校でもネットで外とつながっていると暗くない。ネットの問題は切っても切り離せなくなっている」と語る。
2016年の政府方針がSociety5・0。2018年に10年後の夢のネット社会のイメージビデオを作成。スマート家電、オンライン注文、無人バスなど、多くは今日すでに実現。進展のスピードが速い。学校も同じで、ネットを使わずには進まない。しかし光と影があり、「長時間利用」「ネットいじめ」「出会い系」などの不安もあると指摘した。
総務省が「ネットはいつからが常識」かを調査したところ、0歳が11・6%、1歳が33・7%、2歳が62・6%で過半数に。以前の母親は家事をする間、子供にTV番組を見せていた、今はそれがネットに代わっただけで行為は同じ。違いは、時間になれば終了するTVに対してYouTubeは終わりがないこと。「便利なもの効果的なものは使った方が良いと私は考える立場だが、いつまでも使ってしまう弊害もあることを知ったうえで使うべき」。
「子供時代の私は鍵っ子だった」という竹内氏。専業主婦が減り、共働き家庭が増え1990年代で逆転。今は家に帰って誰もいないのでスマホを見て過ごす。2014年頃から、小学生の暴力行為が急増。朝教室に入るといきなり喧嘩が始まるという。前夜にオンラインゲームで遊ぶうち喧嘩していたから。「ボイスチャットの喧嘩で、売り言葉に買い言葉から始まりエスカレートしていく。ところがボイスチャットを知らない教員が多い。教材がないので仕方ないが、これは何とかするべき」と提起する。ネットいじめの原因で最も多いのがオンラインゲーム。次いでTwitter、LINE、メール、ブログの順だという。
大人と子供たちの感覚は違うと言う。竹内氏はそこで「お前たち、それは常識だろう」というしかり方は通用しないとして実例を示した。
例えばLINEのアイコンに「自撮り」写真を使う行為を、子供たちは「自分が好きすぎ」だとして敬遠するが大人にはその感覚がよくわからない。ネットで知り合った人と実際に会うことに、多くの大人は「危険、ダメ」と言うが、高校生などは「陰で相手を確かめてから会う」「コンサート会場など人が大勢いる所で会う」からほとんど「問題ない」と言う。
竹内氏は総務省が2022年、小~高校生10万人に行ったアンケート調査から、ネットと子供たちの最新の状況を紹介した。スマホ所有率は中1で8割以上、部活の連絡等にLINEが使われるので必要不可欠。男子の最も多いネット利用では小学生ではゲームだが中1でスマホが上回る。女子は小3、4でスマホがトップ。ネットで最も使うのは男女とも動画視聴、次いで男子はゲームだが女子はSNS。
「男女、年齢、また地域によっても違うことを分からないと、ひとくくりでは的外れな指導になる。ネット使用が4時間以上の子供は『よくイライラする』『勉強に自信がない』と言う。ネット依存傾向は急増している」
ネット内で行われるいじめは、外から見えず大人に分かりにくい。「大人は暴走する」「余計ひどくなる」から子供は大人に言わない。
「関西のある市でいじめた子の傾向を調査したところ、部活の参加や朝食摂取が少ない、学校や家庭での安心感が少ないという結果。分析した学生は『つまり愛がない、仲間もいない人』という感想だった。このことに学校はもっと責任を感じなければいけない」
「中学生たちにいじめをなくすための提言を考えさせた。『いじめた子が反省したら許して普通に接する』というのがあり子供はすごいと思った」とまとめた。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2023年3月20日号掲載