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学校施設

服部栄養専門学校の学び 鹿児島県との連携で学生の意識向上を図る

2023年3月27日

調理師や栄養士など食に関するプロを育てる、東京・代々木の服部栄養専門学校(服部幸應理事長・校長)は、食材選択に対する意識醸成を図ることを目的に、調理師本科や栄養士科の学生に向けて「かごしまの『食』体験授業」を昨年12月に実施。さらに1月26日には同校が開発した鹿児島県産の食材を活用した新メニューを披露する「かごしまの『食』発表会」が行われた。

「かごしまの『食』体験授業」(調理師本科)

「かごしまの『食』体験授業」(調理師本科)

「かごしまの『食』発表会」では、かごしま黒豚や鹿児島黒牛、大将季など鹿児島県産の食材を活かし服部栄養専門学校が考案した新メニューを発表した。西洋料理3種類、日本料理3種類、中国料理1種類、製菓製パン3種類の全10品が紹介された。

使用された鹿児島県産の食材は、中身を取り出さなくてもそのまま食べられる「スナップエンドウ」、果皮や果肉が赤味を帯びている「大将季(だいまさき)」など。

( )内が鹿児島県食材

【西洋料理】

①鹿児島黒牛のタリアータ オープンサンド仕立て(鹿児島黒牛、スナップエンドウ)三種の豆のトマトスープ仕立て(=写真A そらまめ、スナップエンドウ、実えんどう)かぼちゃのポタージュ(かぼちゃ)

A 西洋料理「三種の豆のトマトスープ仕立て」

A 西洋料理「三種の豆のトマトスープ仕立て」

【日本料理】

④オクラすり流しそうめん(オクラ)かごしま黒豚の味噌漬け焼き 葱味噌添え(=B かごしま黒豚、スナップエンドウ、麦味噌、芋焼酎)そらまめと海老の蒸し物(そらまめ)

B 日本料理「かごしま黒豚の味噌漬け焼き葱味噌添え」

B 日本料理「かごしま黒豚の味噌漬け焼き葱味噌添え」

【中国料理】

⑦かごしま黒豚肉団子のピリ辛黒酢ソース(=C かごしま黒豚、そらまめ、ピーマン、黒酢)

C 中華料理「かごしま黒豚肉団子のピリ辛黒酢ソース」

C 中華料理「かごしま黒豚肉団子のピリ辛黒酢ソース」

【製菓製パン】

⑧大将季のカンパーニュフリュイ(=D 大将季)きんかんジャム きんかんキャラメルジャム(きんかん)安納いもブリュレ(安納いも)

D 製菓製パン「大将季のカンパーニュフリュイ」

D 製菓製パン「大将季のカンパーニュフリュイ」

試食会には、鹿児島県の須藤明裕副知事、鹿児島県経済農業協同組合連合会園芸事業部東京営業所の日高誠博所長、同校の服部幸應理事長・校長が出席した。

日本料理の「かごしま黒豚の味噌漬け焼き 葱味噌添え」は黒豚、味噌、焼酎と主たる原料を鹿児島産で揃え、豚肉を漬けた味噌も葱味噌添えにして提供するなどSDGsの観点からも無駄のない料理となっている。

中国料理の「かごしま黒豚肉団子のピリ辛黒酢ソース」は、かごしま黒豚のばら肉をミンチにした肉団子の中にそらまめを詰めることで食感を楽しめる料理。

昨年12月に行われた「かごしまの『食』体験授業」は、調理師本科2年と栄養士科1年の学生を対象に行われた。はじめに鹿児島県は全国有数の畜産県であることや、温暖な気候を利用して冬から春にかけて農産物が生産されていることなどが紹介された。

栄養士科の授業では、鹿児島県の食材として実えんどう(まめこぞう)を使用。グリーンピースが苦手な子供でも食べやすいよう開発された「まめこぞう」は甘みが強く、従来品種と比べてにがみや青臭さが少ないのが特徴。「まめこぞう」という名前は地元の農業高校生が考えた。授業では「まめこぞう」の生産農家とオンラインでつなぎ、栄養士科の学生との意見交換が行われた。

調理師本科の授業では鹿児島県の食材を使った調理実習に取り組んだ。西洋料理クラスは「黒さつま鶏のグランメール」と「新ごぼうのスープ」、日本料理クラスは「新ごぼう饅頭」と「穴子の柳川風」、中国料理クラスは「宮保鶏丁」と「ごぼうと山芋のスープ」、製菓製パンクラスは「大将季のタルトレット・ヴェリーヌ」を完成させた。

日本料理クラスで普通のごぼうと新ごぼうを食べ比べた学生からは「いい香りがする」「食感がシャキシャキしている」などの感想が聞かれた。

 

■かごしまの『食』体験授業を受けて
―学生の感想から―

栄養士科・川口歩弓さん

鹿児島県産「まめこぞう」と冷凍グリーンピースを、どちらか分からないようにして食べ比べて、見た目・香り・うま味を調査しました。個人的な感想としては「まめこぞう」の方が良い香りで、味も「まめこぞう」の方が甘みもあり、食感の良さも感じました。

「まめこぞう」を使った調理実習で作った「まめこぞうとさつま芋のごはん」では、茶碗の中がまめこぞうにより華やかな色になり、「まめこぞうコロッケ」は甘みがコロッケ全体に広がるなど、どちらも美味しく作ることができました。

調理師本科・荒谷りりかさん

授業の前は、鹿児島県といえば、さつま芋や焼酎が有名という印象を持っていましたが、鹿児島県の方から話を聞き、全国有数の畜産県であると知りました。私は日本料理を選択しており、授業では鹿児島県産の新ごぼうを使用しました。新ごぼうと他県産のごぼうを食べ比べてみましたが、新ごぼうは柔らかさなどが全く違いました。

調理実習では、新ごぼうは切っている時から良い香りがして、アクも少なかったです。今回「新ごぼうを切って揚げ、だしにつけるとおいしい」と教えていただいたので新ごぼうを見かけたら試してみたいと思います。

鹿児島県の須藤副知事は「この体験授業は鹿児島県の農業や畜産物について知ってもらうことで、食材の選択の意識を高めていただくために実施しています。栄養士科の授業では、まめこぞうとグリーンピースを比較することで、その良さを知ってもらうことができました。また調理師本科では、鹿児島県の食材を使って調理実習が行われました。食の世界に進んだ際は、授業の経験を活かし、鹿児島県産の食材を選んでいただければと思います」と語った。

「かごしまの『食』体験授業」は鹿児島県ならびに鹿児島県経済農業協同組合連合会と協力し、食のプロを目指す学生に対して2019年度から実施。当初は栄養士科の学生に向けて「まめこぞう」を知ってもらうため行われた。この体験授業は2021年度から調理師本科の授業にも組み込まれ、鹿児島産の食材を使った調理実習が行われるようになった。

2021年度からは服部栄養専門学校が鹿児島産の食材を使ったメニューを考える「かごしまの『食』発表会」を実施。今回で2回目の開催となった。なお考案されたメニューは「かごしまの食ウェブサイト」(https://www.kagoshima-shoku.com/)で紹介される予定。

食材の産地を意識すると料理の世界が広がる
服部栄養専門学校 服部幸應校長

「収穫の時期を学ぶことで学生に良い刺激になった」と語った

「収穫の時期を学ぶことで学生に良い刺激になった」と語った

普段生活をしている中で、自分が食べたものが、どこで生産されたか確認する機会は少ないと思います。東京都などは食料自給率0%のため、他県や外国からの食材に頼っているのが現状です。そういう意味でも鹿児島の食材に触れることは、学生にとって良い体験になりました。

今後食の世界に進むのなら、どこの食材を使っているのか意識して料理を作ることが望まれます。今回のような産地を意識した取組によって、料理の世界も広がると思います。

食材の旬には「はしり」「さかり」「なごり」の3つがあります。「はしり」は収穫されたばかりの頃、「さかり」は栄養価も高く一番おいしい頃、「なごり」は来年まで食べられないという思いが味を引き締めます。料理を提供するときも「はしり」「さかり」「なごり」を考えながら出すことが大切です。今回、食材の収穫の時期を学ぶことで学生にとって良い刺激になったのではないでしょうか。

「かごしまの『食』発表会」では鹿児島県から良い食材を提供いただき、おいしい料理ができあがりました。今後もこの取組を続けてまいります。

教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2023年3月20日号掲載

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