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気づき“考える”食育を大切に~農林水産省「食育推進フォーラム2023」

2023年3月20日

現在は第4次食育推進基本計画(2021年4月策定)が推進されている中、食を取り巻く環境も変化している。農林水産省は食育活動として「食育推進フォーラム2023~食育キーパーソンに学ぶ!これからの食育とその実践~」を2月20日、オンラインと会場のハイブリッドで開催。気づき“考える”食育やその実践について講演・事例紹介、最前線で取り組んでいる生産者や研究家などによるパネルディスカッションが行われた。

パネルディスカッションでの意見交換(写真右から近藤ファーム・近藤氏、ビストロパパ・滝村氏、キユーピー・上田氏、食育インストラクター・和田氏、東京家政大学・内野氏)

パネルディスカッションでの意見交換(写真右から近藤ファーム・近藤氏、ビストロパパ・滝村氏、キユーピー・上田氏、食育インストラクター・和田氏、東京家政大学・内野氏)

「食育は世界を救う」 服部幸應氏が基調講演

1部は服部栄養専門学校の服部幸應理事長・校長がビデオ出演し、「食育は世界を救う」と題して基調講演。米・生物学者のレイチェル・カーソンが著書「沈黙の春」で記したアメリカのクリア湖で起きた、殺虫剤が食物連鎖で渡り鳥に与えた被害などを紹介。第4次食育推進基本計画では食育の取組が誰でも一目で分かるよう、食育ピクトグラムが取り入れられたと語った。

事例紹介では料理家で食育インストラクターの和田明日香氏が、若い世代の食や食育への手法、今の時代に合った食育について語った。食育は子供に教えるものと考える人も多いが、子供たちは食べ物への興味を生まれながらにして備えているので、親が一緒に楽しみながら食べることが大事だとする。子供は食に対して思わぬ疑問を投げかけてくるが、その疑問を一緒に考えることが食育であると指摘した。

今日的な実践例を発表 オンラインの有効活用など

2部のパネルディスカッションでは、和田明日香氏に加えキユーピー広報・グループコミュニケーション室の上田史恵氏、料理研究家でビストロパパ代表の滝村雅晴氏、近藤ファーム代表の近藤剛氏など食育の最前線で実践に取り組むパネリストが登壇、時代に合った食育のあり方などが実践事例を交えて話し合われた。ファシリテーターは東京家政大学ヒューマンライフ支援センターの内野美恵准教授。

オンライン見学で課題

キユーピーで工場見学の企画や「マヨネーズ教室」「SDGs教室」など小学校への出前授業を担当している上田氏は、同社が20203月に工場見学の休止を発表した後、オンライン工場見学などを行ってきた。

「オンライン工場見学ではクイズなど双方向のコミュニケーションが取れるように工夫した。実際の工場見学は1時間から1時間半だが、オンラインでは30分から45分に設定し、その中に伝えたいポイントなどを詰め込んで、参加者とコミュニケーションを図りながら進めている。ただし、オンラインではどうしても体感できない部分が今後の課題」と語る。

遠隔でレシピ協働考案

パパ料理研究家として活動する滝村氏は、コロナ禍以降、リアルとオンラインの両方で料理教室を開催してきた。

「オンラインで料理教室を開催するようになり3年が経つが、今では子供だけで料理を作るケースも見られる。すべて家事を母親に任せるのではなく、家族も家事を分担することが大事」と考えている。

また滝村氏はNPO法人「のこたべ」と一緒に北海道の小学生と収穫体験を行い、収穫したものは道の駅で販売している。北海道の高校生がたらこを使ったスイーツを販売した時は、レシピの考案で協力したが、全国の生産者とZoomなどを使って新しいレシピを考えたという。

食選力が地産地消を

東京都西多摩郡で野菜を生産・販売している近藤ファームは都内の小学校100校以上に給食の食材を納品。さらに農業体験や出前授業なども行っている。

「原材料費の高騰で生産者は厳しい状況にあるが、この困難な状況を消費者が理解するには、消費者が食に関する知識や食選力を身につけることが求めらる。価格にばかり目が行きがちだが、地元で採れたものを買えば地元でお金が回る。地域の税収が増えればそれが子供の教育に使われる。そうした地産地消の良さを理解してもらう活動を行っていく」と語った。

少しずつ良い未来を

食育インストラクターの和田氏は、食材を選択する際、どちらが未来のためになるか少し考えるだけで社会が少しずつ変えられると語った。「今の行動が地球のためになるかどうか、後から分かってくる。私は食材を残さず使い切るヒントなどを提案。廃棄物を出さない、必要な物を見極める力がつく」と語る。

会場からの「気になっている食に関するキーワードは」という質問に対して、和田氏は「ブリで作るふりかけである『ぶりかけ』を作ったので広げていきたい。魚を食べることの大切さを伝えることができる」、上田氏は「『体感』がキーワード。この3年間の子供たちの経験不足をどう補っていくかが今後の課題」、滝村氏は「地産地消ではなく、知り合いが作って知り合いが消費する『知産知消』。オンラインなどで人のつながりを広げていくことが大事」、近藤氏は「農園だよりで学校の栄養士や子供たちに向けて農場の現状を発信している。生産者が何を考えているか、リアルに伝え『共感』してもらうことが大事」と回答した。

最後に内野氏は、コロナ禍で様々なことができなくなったが、オンラインなどデジタルの力で乗り越えてきた。「今日はみんなのアイデアで食育が広がっていく可能性を感じることができた」と締めくくった。

教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2023年3月20日号掲載

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