部活動への生徒のニーズに応え教員の負担軽減に取り組む文部科学省は、部活動の運営を学校から地域への「部活動の地域移行」を推進。そうした中、近畿日本ツーリスト(KNT)が企業とのパートナーシップ経験を活かし、部活動コンテンツをオンラインで提供する「部活動サポートサービス」が注目されている。2023年度からのサービス開始に先立ち、昨年11月から今年2月まで全8回にわたり、沖縄県渡嘉敷村立渡嘉敷小中学校の中学生に向けてオンライン部活がトライアルで実施された。
KNTの「部活動サポートサービス」は、企業などと連携して指導者を確保し、「eスポーツ部」「ダンス部」「ドローン部」「ヨガ部」など魅力的な活動をオンラインで提供するもの。
NTTe―Sportsの協力による「eスポーツ部」は、オンライン指導で個人練習やチーム戦などを実施。プレイスキルだけでなくICT機器や通話アプリの操作、オンラインにおけるマナーやコミュニケーションの基礎なども学ぶ。「ダンス部」はエイベックス・マネジメントが派遣するプロのダンス講師によるオンライン指導。
(一社)ドローン大学校の協力による「ドローン部」は、国家ライセンスを参考に国内で厳守すべきルール、安全な飛行の知識と技術を学ぶ。「ヨガ部」はホットヨガスタジオLAVAのインストラクターが、中学生の心身の成長をサポートする。
今回、同校は「eスポーツ部」と「ダンス部」のトライアルに取り組んだ。現在の部活動はバドミントン部のみで、離島ならではの悩みを抱えていたこともあり、生徒の選択肢を増やす意味からオンライン部活を実施。土日を中心に生徒たちは1回90分で取り組んだ。
渡嘉敷村教育委員会の與那嶺悟氏は「部活動が地域移行するにあたり、島の人材だけで可能か不安だったことから、トライアル実施に踏み切った。離島でも専門的な講師から指導が受けられて、子供たちが生き生きした様子が見られた」と語る。
ダンス部は東京のエイベックス本社とオンラインでつなぎ、有名アーティストのバックダンサーなどを務めるTAiSHI氏が講師。最初は緊張していた生徒達は、回を重ねるごとに積極性が引き出され、楽しむことができた。全活動を終えた生徒たちは発表会でダンスの成果を披露した。
eスポーツ部は、世界で1億人以上がプレイしている「リーグ・オブ・レジェンド」を体験。初めて体験する生徒が多い中、予想以上の上達を見せたという。日本でも課題解決力やコミュニケーション能力の向上を目的に取り入れる学校が増えているeスポーツだが、NTTe―Sports主査の金基憲氏は「ICTのスキルなどを身につけながら、目標に向かってチームで協力し取り組むなど、リアルの部活動と同様に熱中して打ち込める」と語る。生徒からは「はじめてで不安もあったが、実際にやってみたら面白かった」、「将来、自分がどういう仕事に就くか考えるきっかけになった」との声が聞かれた。
KNTは2023年度から「部活動運営事務局」の代行を受け付ける。教委や学校から受託し、部活動の受け皿となる地域クラブや企業、大学生などを取りまとめる。具体的には部活動の指導者や活動場所の調整業務、生徒への連絡、保護者の窓口、保険対応など部活動運営に必要な業務を代行。多様化するニーズに適応し、AIによる無人撮影システムなど最新技術を取り入れたコンテンツを提供する。
また同社は部活動サポートに先駆け、「PTA業務アウトソーシングサービス」を昨年8月から開始。行事の受付や事務作業などの人材派遣、学校行事の企画運営をサポートするイベント支援、出張授業などのサービスを提供している。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2023年2月20日号掲載