文部科学省の養護教諭及び栄養教諭の資質能力の向上に関する調査研究協力者会議の「審議のまとめ」では、両教諭の専門性と共に役割の範囲の明確化が重要だと報告。養護教諭の役割の中でも期待が大きい「健康相談」だが、ICTやSNS活用等で多様な接点を設けることに言及している。「審議のまとめ」の詳細は下記の通り。
○①「救急処置」(緊急事態への対応)②「健康診断」③「健康観察」のような職務を契機として、児童生徒等の心身の健康課題を把握し、当該児童生徒等や保護者等からの健康相談に対応することは、児童生徒等の心身の健康状態の保持増進を図り、以て児童生徒等の健やかな成長を期する上で極めて重要である。
○日常的に児童生徒等と接する学級担任等が当該児童生徒等からの健康相談に対応することが適切な場合も多い一方で、養護教諭は、心身の健康課題の有無にかかわらず、学校生活に何らかの不安を抱く児童生徒等に対して、学級担任等とは異なる視点から相談に乗ることで、健康課題や不安の解決に向けた糸口の発見につなげることができるという強みを有している。
○児童生徒等にとっては、健康相談を受けることにより、身体的な症状に起因するものも含めて、心理的ストレスの軽減が図られると考えられることから、健康課題の状態や心理的な状況等に応じて、校内に相談する相手が複数いることが重要であり、校長等の管理職の管理・監督のもと、学校医や学校歯科医、学校薬剤師、スクールカウンセラー等も含め、それぞれの専門性を生かして、児童生徒等からの健康相談に対応するための体制を構築することが重要となる。
○その意味で、養護教諭は、児童生徒等からの健康相談に対応する主体の一人という位置付けとなるが、一方で、養護教諭は、「専門職」と「教諭」の双方の立場から、学校医や学校歯科医、スクールカウンセラー等の専門職とその他の教諭等をつなぐことができる専門性を有しており、児童生徒等からの健康相談に対応するための体制において、中心的な役割を担うことが期待される。
○その上で、健康相談により得られた情報については、児童生徒等のプライバシーや心情等にも配慮した上で、学校生活上、考慮すべき事項については、関係する教職員の間で共有するとともに、養護教諭においては、学級担任等に対して適切な助言を行うことが求められる。
○養護教諭による健康相談の実施方法としては、様々な方法が考えられ、従前と同様、保健室等において対面で実施することも引き続き効果的である一方で、必ずしもそれにとらわれることなく、場合によっては、ICTを活用して、オンラインやSNSの活用等により実施する方が、児童生徒等にとって相談しやすいこともある。このため、児童生徒等の立場に立った上で、上記の相談に対応する主体も含めて、様々なチャンネルにより相談できる体制を整えることが重要である。
○また、児童生徒等の心身の健康課題が家庭生活に起因する場合も想定され、そういった場合にも、適切な対応をとることができるよう、校長等の管理職の管理・監督のもとで、学級担任等や養護教諭、更には、学校医や学校歯科医、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等を含めた校内体制を構築することが必要である。
○なお、養護教諭が、保護者等から自身の健康相談を受けているケースがあるといった指摘もあるが、保護者自身の健康に関する相談等は養護教諭の職務には含まれないことから、校長等の管理職が毅然と対応するべきである。
○関連して、教職員が50 人以上の学校においては、衛生管理者を置かなければならないとされており、養護教諭が充てられていることが多いものの、教職員の労働安全衛生については、一義的には養護教諭の職務ではなく、また、衛生管理者については、衛生管理者免許取得者、「保健体育」の中学・高校教諭、養護教諭等から選任することとされていることから、校長等の管理職が、校内の教職員の業務分担体制等を勘案して選任することが必要である。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2023年2月20日号掲載