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学校経営に食育の位置づけを 第4分科会で実践と協議~学校給食大会オンラインで開催

2022年11月21日

「次代を担う子どもたちの心身の健康を育むために」を主題に第73回全国学校給食研究協議大会が10月13・14日、国立オリンピック記念青少年総合センターからオンラインで開催された。初日の全体会では文部科学大臣表彰、シンポジウムが行われた。2日目は課題別の8分科会で研究協議。第4分科会「学校経営に食育を位置付け栄養教諭を中心として推進するための方策」から、実践発表と協議の概要を紹介する。

第4分科会での協議風景

第4分科会での協議風景

■「自己を見つめ、よりよく生きようとする子どもの育成」~学校経営方針のもと「命を大切にする子ども」を支える食育の実践~=栃木県野木町立新橋小学校栄養教諭・谷田貝洋子氏

前任校の小山市立小山城南小学校は児童576人・20学校の中規模校。朝食を「ほとんど食べない」子供が4%で、「食べたくない」「時間がない」が主な理由。残食は4%で「苦手なものは食べない」子供が見られることから、自然や給食に関係する人々に感謝の念を養うため「命を大切にする子ども」に主題設定。給食残食率42%20%に、地場産物活用率(品目ベース)341%500%など数値で目標設定した。

実践では教職員への配膳研修、「完食を無理強いしない」など教員による指導のばらつきがないよう基本方針の共通理解を図ることに配慮した。

実践の結果、朝食喫食率は916%で目標とした100%には届かなかったが、「ほとんど食べない」児童が42%から27%に改善された。食の問題がある児童はほぼ固定化されて、家庭への働きかけが課題だとした。

■「生き生きと活動する北日野っ子を育む食育の推進」~学校経営から考える栄養教諭・学校・家庭・地域との連携~=福井県越前市北日野小学校長・近藤雅樹氏

同校は児童186人の小規模校で、栄養教諭は兼務校。朝食の喫食率が98%で高い反面、食事内容は1品だけなどバランス面で偏りがあった。食に関するアンケートで「1品だけ」の児童が45%だったところを30%に、「栄養バランスを考えていろいろなものを食べるようにしている」を選ぶ児童が50%だったのを60%に改善することを目標とした。

授業・活動の様子を中心に学校HPの更新頻度を増やすなど積極的な情報公開で信頼される学校経営に取り組んだことから、家庭・地域の理解と協力を得られた。食に関する校内全体計画を着実に実施。その結果「朝食に1品だけ」の児童は45%23%に減少、「栄養バランスを考えいろいろなものを食べる」は50%から59%に増えた。

■心に残る食育を目指して~新たな食育推進体制と食育の在り方を模索して~=奈良県広陵町立広陵北小学校栄養教諭・中島育子氏

同校児童の食に関する実態は、260人中で朝食を食べない児童が17人、平均残食率は175%で少ないがクラスによる差があることから、教員の共通理解の課題があると推測。「食に関する知識と自然や生産者への感謝の心を育み心身ともに健康な児童の育成」という食育推進目標を掲げ、「朝食を食べよう」「残食を減らそう」「地場産物を活用しよう」という3つの柱を設定した。

教科と連携した指導例では、5年家庭科「朝ごはんを作ってみよう」でDVD教材を視聴し、家庭での実践を保護者にも見たもらった。「朝ごはんを自分で用意すること」が「ある」児童は学習前6月は45人中16人だったが、学習後1月は44人中23人に。朝食を「赤・黄・緑の食品がそろうように考えて」食べている児童は15人から30人に増えた。1年生には家庭に「給食ミニブック」を持ち帰り、食の情報をキャッチボールしている。

食育を学校の推進目標に位置づけ、教科と連携したことで、教員の食育への意識の変化も見られた。給食時間には、苦手な食べ物でも少しは食べるようアドバイスするなど、丁寧に指導する担任が増えたという。

【研究協議】組織な食の指導について

分科会後半の研究協議では、指導助言者の新潟医療福祉大学健康科学部健康栄養学科教授・森泉哲也氏から、「令和の学校教育」が語られているが、教科指導だけでない生徒指導や特別活動などの全人教育が根底にあること、日本の学校給食の特色も同じであることを忘れないようにしたいと指摘。また食育の「推進体制のあり方」や、それが機能しているかを自問するよう呼びかけた。

同じく指導助言で司会者の東京都調布市立深大寺小学校長・濱松章洋氏は、食育に関する教員の意識は変わっていないのではないだろうかと課題提起。実践の成果を上げるポイントについて問いかけた。

中島氏は、まず栄養教諭が1人で努力するところからスタートし、「頑張って資料を用意し配布すれば、少しずつでも実践してくれる」と発言。さらに「組織化する工夫や困りごとは何か」という質問に谷田貝氏は、「給食主任、教務主任を味方にする」と語った。濱松氏はカリキュラムマネジメントについて、「実施の前提として実態把握と組織が必要だ」と指摘。次の検討議題を「教職員と連携した食育の進め方」に深めた。

中島氏は「推進体制や学校の教育目標への位置づけは栄養教諭だけでは難しく、管理職がリードしてくれることが望ましい」とし、これについて管理職の立場で近藤氏は自身の経験を振り返り「管理職になる以前は食育にあまり熱心でなかった。後から気づいたが、栄養教諭は職員室にいて室内を教頭と同じように広く見ている。一人ひとりをよく見ているので、その素晴らしい立場を生かしてほしい」と期待した。

濱松氏は校長のリーダーシップについて、「給食の素晴らしさを伝えられたある栄養教諭との出会いがあった」という自身の体験から、管理職を動かす栄養教諭の熱量も重要であると語った。森泉氏は「管理職のリーダーシップが大切だが、その前に周りの先生方に働きかけ、組織を動かしていく方が先ではないか」と助言した。

教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2022年11月21日号掲載

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