文部科学省から先ごろ公表された2023年度概算要求では、学校保健・健康教育分野の「感染症対策の充実と学校健康教育の推進」を柱として、前年度より9400万円増加して7億4100万円(他に事項要求)を要求。この中で学校保健事業では「学校保健の推進と感染症対策の充実」に6億3100万円(他に事項要求)が対前年比6300万円増で計上された。その事業別予算内容は次の通り。
新規事業として「養護教諭の業務の在り方に関する調査研究事業」に1200万円を要求。新型コロナウイルス感染症や現代的健康課題への対応などで、複雑化・多忙化する養護教諭の業務の実態を調査する。他の教職員や関係機関等との連携・調整における業務や役割を整理することで、児童生徒等の健康の保持増進に、より効果的に取り組める体制を構築することを目指す。
同じく新規で「外部人材を活用した学校保健推進事業」では5000万円を要求。複雑化・多様化する個別の現代的健康課題を抱える子供たちに対し、よりきめ細かな支援を実施するため、学校に配置されている養護教諭等を支援する体制を強化することが課題となっている。都道府県・指定都市が実施する、経験豊富な退職養護教諭等を派遣し、研修等の充実や繁忙期等の体制強化を図ることで校外の研修会等に参加しやすい環境を整備する事業に対し、教育委員会等に対してその経費の一部を補助するもの。補助率は1/3。
さらに新規事業として「学校の感染症対策の支援」には事項要求(新規)を計上。各学校において感染症対策を徹底する上で、継続的に必要となる消毒液や保健衛生用品等の整備等に必要な経費を補助する。また特別支援学校のスクールバスにおける感染リスクの低減を図るため、教育委員会等が実施するスクールバスの増便等の取組を支援する。
「がん教育等外部講師連携支援事業」に3200万円(前年度同)を要求。学習指導要領を踏まえたがん教育をはじめ、それぞれの地域の実情に応じた取組を支援するとともに、医療機関と連携し、医師やがん経験者等の外部講師を活用したがん教育等の取組を支援。
「児童生徒の近視実態調査事業」に7000万円(5900万円)を要求。児童生徒の視力低下を防止するための対策の検討に資するため、視力低下が進行する時期に当たる小中学生を対象に、医療関係者等の協力により児童生徒の近視の実態やライフスタイルとの関連を縦断的に調査する。
「学校健康診断情報のPHRへの活用に関する調査研究事業」に3億6300万円(3億7200万円)を要求。政府全体のPHR(Personal Health Record)推進の方針を受け2022年度までに実施した、学校健康診断結果をマイナポータルを通じて本人へ提供すること(PHR)に係る実証研究の結果等を踏まえ、幼稚園及び大学を対象として、学校健診PHRの実証事業を行うとともに、今後の学校健診PHRの本格実施に向けて、導入マニュアルの作成など推進体制を構築。
「脊柱側弯症検診に関する調査研究事業」に1300万円(1200万円)を要求。学童期での脊柱側弯症を学校健康診断で早期に発見し、支援につなげていく環境整備に向けた検討を行うための調査研究を実施し、地方自治体における、検査機器を用いた脊柱側弯症検診に係る先行事例の収集や検診を効果的に行うための仕組みづくりを図る。
「学校等欠席者・感染症情報システムの充実」に2400万円(3600万円)を計上。新型コロナウイルス感染症にも対応した学校等欠席者・感染症情報システムと各学校の統合型校務支援システムを連携した運用を引き続き推進し、より効率的で精度の高い感染状況等の把握を実現する(日本学校保健会補助の内数で実施)。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2022年9月19日号掲載