農林水産省は小学生を対象にした初めての食育教材「わたしたちと『和食』」を制作し、モデル授業を行った。文部科学省とユネスコ・アジア文化センターが連携して制作したもの。授業はユネスコスクール加盟校の横浜国立大学教育学部附属鎌倉小学校で実施。授業後のアンケートでは、参加児童の9割が、授業を機に「和食をもっと食べたい」と回答するなど和食への興味を育てるきっかけとなったようだ。
各都道府県に、和食を伝える中核的な人材として「和食文化伝承リーダー」を育成する研修会を2019年度から農水省が取り組んでいる。同教材はそれらのリーダーや教育現場の教員等が、和食の全体像をわかりやすく伝えるための伝承ツールという位置づけ。
学習指導要領に沿った内容で、発達段階に応じて構成。動画(中学年、高学年)、教材(小・中・高学年の各児童用、指導者用)に分かれている。指導者用教材には、授業への取り入れ方や指導計画と授業展開例なども掲載されている。
教材は導入部分で「自分事化」しやすい身近な問いかけを入れ、関心が高まり知識が深まるよう工夫。また随所に和食とSDGsを絡めた内容やコラムを入れ、SDGsとの関連などを自ら考える工夫、さらに、調べ学習だけでなく自分のこれからの生活に活かしていくことを目的に、中・高学年ではページにワークシートを設けるなど工夫されている。
モデル授業を受講した4年生児童(35人、有効サンプル34人)に前後の意識の変化についてアンケート調査を行った結果は、次の通りだった。
児童の73・5%が、和食を身近なものであると回答。モデル授業を受ける前の和食に対するイメージは、「歴史がある」「健康によい」「栄養バランスの良さ」「季節を感じられる」「旬のものがおいしく食べられる」というプラスのイメージがある一方で、「古いイメージ」「地味」というマイナスのイメージも持っていた。
モデル授業を受けた後では、和食に対するイメージの変化が見られた。モデル授業後、和食のイメージが変わった児童が全体の79・4%だった。モデル授業実施後のアンケートでは、素材の美味しさが味わえる(14名→21名)、旬のものが美味しく食べられる(15名→23名)、健康に良い(21名→26名)などの項目でプラスの変化がみられた。
また児童が和食の特徴を理解したことで、地味(4名→0名)、古いイメージ(19名→9名)などマイナスのイメージが改善された。
モデル授業を受けた後、日々の食事で和食を食べたいという児童が増加。「もっと和食の盛り付けの美しさや、季節などを感じてみたい」「日本の大切な文化だから」「健康に良いし、見た目も素敵で、日本で守らなければいけない食文化だから」など和食の特徴や良さを再認識したことで、児童の和食への関心が高まった。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2022年4月18日号掲載