患者数5万人未満が対象の「希少疾患」は日本では推定600万人、世界で約7000種類に上る。先ごろ開催された小中高校教員向け啓発セミナーで、登壇した中通総合病院小児科科長・千葉剛史氏は、学齢期に発症する疾患が多いことから、身近にいて他の子供との異変に気づける養護教諭をはじめ学校の教員がこれを認識し、保護者に受診を促すなどの早期診断につなげることが大切だと訴えた。
セミナーは武田薬品工業㈱がオンラインにより2月26日、「いつもそばにいる先生だから気づいてほしい~希少疾患のこどもからの隠れたメッセージ」をテーマに開催された。希少疾患の一例として遺伝性血管性浮腫(HAE)患者の場合、約半数は未成年で発症するが診断率は16%という低さで、確定診断まで13年以上かかるという。学校で多くの子供に接している教員の気づきが、青少年期に本人も周囲も不明な症状で長く苦しむ子供をなくすことにつながると期待される。
学齢期に発症する、または症状を示す疾患の代表「遺伝性血管性浮腫(HAE)」、「フォン・ヴィレブランド病(VWD)」、「脊髄性筋萎縮症(SMA)」についてとりあげ、発見が遅れる理由について千葉氏は「健診ではメジャーな疾患の発見に向き、さらに専門医が少ないことから医者でも認知度が低い」ことを指摘する。
HAEは全身の様々な部位にかゆみのない浮腫が繰り返し現れる病気で、「体の一部が突然はれる、むくむ」「お腹に浮腫や激しい腹痛」など学校で感知できる可能性がある症状を紹介。VWDは出血が止まりにくい病気で、「鼻血が10分以上続く」「小さな切り傷で絆創膏を何度も交換する」「女子の場合で生理が7日以上続く、100円玉より大きい血塊が出る」などが学校で感知できる症状。SMAは運動の筋肉をコントロールする神経が少しずつ失われていく、進行性の疾患。運動が苦手で転びやすくなる、歩くと体が揺れる、立ち上がるのが遅くなるなどの症状が見られる。徐々に進行するのではじめは気づきにくいが、今まで出来ていたことが出来なくなるところが注目点。
教員には生徒と保護者へのコミュニケーションを期待すると千葉氏は語る。生徒にはよく状況を聞き、希少疾患やその可能性がありそうな場合は「病院でみてもらい診断してもらうのがいいかもしれない」と伝え、生徒が保護者と相談するか、保護者と面談する。保護者には早期発見の意義や概要などを伝える。事情によって連絡帳やお便りの活用も有効だと言う。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2022年4月18日号掲載