コロナ禍で学校の臨時休業による学力の低下が懸念されているが、文部科学省が3月末に公表した2021年度「経年変化分析調査」の結果によると、前回調査と比較して学力の低下はみられなかったことが明らかになった。国語では小・中学校共平均点は前回と同様。小学校・算数と中学校・数学では平均点がやや上回ったが、同省は次回以降の結果を合わせて分析する必要があるとしている。
調査は昨年6月、全国学力・学習状況調査と別に抽出した小学校600校の6年生、中学校749校の3年生が対象で小学校5年生、中学校2年生時までの学習内容が出題範囲。国語、算数・数学のいずれか1教科に加え、中学校は今回から英語が加わった。PISAの習熟度レベルを参考に、問題の難易度から算出した「学力スコア」の平均を、前回調査(2016年度)との比較で学力変化を観察した。
小学校国語は平均が505・8で、前回も同値だった。また中学校国語は平均511・7で、前回(508・6)をわずかに上回った。小学校算数は平均507・2で前回502・0を若干上回った。同様に中学校・数学は511・0で、前回(502・0)より9ポイント上回った。
小学校算数、中学校国語、同数学はいずれも学力スコアが前回を上回っていることについては、同省は「若干学力が向上しているとも解釈しうるが、次回(2024年度予定)以降の結果も合わせて分析することが必要」と説明している。
同時期の保護者調査ではコロナ禍の臨時休業中の家庭状況をたずねている。「学校の勉強を手伝った」のは、小学校では「数回」(32・3%)、「週に1~2回」(22・4%)、「毎日またはほとんど毎日」(26・9%)。一方で「全くない」は17・3%だった。何らか手伝った保護者が8割以上、手伝わなかった保護者は2割近くだった。この傾向が中学校では異なり「全くない」と回答した保護者が49・7%で半数近くに上った反面で、「数回」(30・7%)、「週に1~2回」(11・9%)、「毎日またはほとんど毎日」(6・4%)など、勉強を手伝った保護者は5割に満たなかった。
保護者が「学校の教材とは別の学習教材を探すのを手伝った」という設問では、「全くない」と「手伝った」の回答が小・中学校共に分かれた。小学校では「数回」(30・3%)、「週に1~2回」(16・1%)、「毎日またはほとんど毎日」(17・0%)を合わせると「手伝った」が6割以上だが、「全くない」(35・3%)も3分の1以上に上った。さらに中学校では「全くない」が49・2%で半数近く。「数回」(32・9%)、「週に1~2回」(10・3%)、「毎日またはほとんど毎日」(6・1%)を合わせ「手伝った」は49・3%。「全くない」と「手伝った」がほとんど同じで2分された。
休業期間以降、新たに子供を学習塾や習い事に通わせた小学校の保護者は12・8%、中学校は16・1%だった。通塾の小学校の内訳は「学習塾」が7・6%、「習い事」が4・0%、「学習塾と習い事の両方」が1・2%。中学校ではほとんどが「学習塾」で14・1%、「習い事」が1・2%、「学習塾と習い事の両方」が0・8%だった。
宿題や学習教材への関りや新たな通塾の度合いなど、休業期間中の保護者の対応などの家庭状況に相違が大きかったことが明らかになった。同省はこの結果をもとに社会経済的背景や学習環境による学力との関係を、さらに追跡分析を行う予定だという。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2022年4月18日号掲載