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学校施設

地域とつながる食の学び 服部栄養専門学校

2022年3月28日
  1. 「かごしまの「食」発表会」を開催
  2. 地元・渋谷区と連携 学校給食と中学校部活動で
  3. 服部幸應校長 公式YouTubeチャンネル開設

「かごしまの「食」発表会」を開催

食の世界で活躍する調理師や栄養士を育成する服部栄養専門学校(服部幸應理事長・校長)は鹿児島県と連携し、学生の意識向上を図ることを目的に12月に栄養士科の学生、1月に調理ハイテクニカル経営学科の学生を対象に鹿児島の農畜産物を利用した「かごしまの『食』体験授業」を実施。さらに2月1日には鹿児島の食材を活用したオリジナルメニューを作る「かごしまの『食』発表会」が行われた。

食材の持つ力を活かして

栄養士科授業 ジャムにした「まめこぞう」をクラッカーにのせて試食

栄養士科授業 ジャムにした「まめこぞう」をクラッカーにのせて試食

「かごしまの『食』発表会」では同校の教員が、鹿児島県の食材を活かして考案した新メニューとして、西洋料理4種類、日本料理4種類、中国料理2種類、製菓製パン3種類の全13品が紹介され、試食が行われた。

「かごしまの『食』体験授業」は今年で3年目となるが、今回は新たな試みとして全国有数の畜産県で農業県である鹿児島県をアピールする意味から、鹿児島県産の食材を使った新メニューが発表された。

今回使用された鹿児島産の食材は、えぐみが少なく滑らかな食感が特徴の「新ごぼう」、鹿児島県のオリジナル地鶏でやわらかい歯ごたえの「黒さつま鶏」、デコポンの枝替わりの品種として発見された「大将季(だいまさき)」などで、以下の13点が考案された。

( )内が鹿児島県産食材。

【西洋料理】
A〈西洋料理〉新ごぼうのスープ

A〈西洋料理〉新ごぼうのスープ

①黒さつま鶏のグランメール(黒さつま鶏、新ごぼう)新ごぼうのスープ(=写真下A 新ごぼう)新ごぼう・まめこぞうのパッパルデッレ(新ごぼう、まめこぞう)赤エビのカダイフ仕立て新ごぼうのピュレ添え(新ごぼう)

【日本料理】
B〈日本料理〉かごしま黒豚の角煮丼

B〈日本料理〉かごしま黒豚の角煮丼

⑤新ごぼう饅頭(黒さつま鶏、いんげん、新ごぼう)かごしま黒豚の角煮丼(=B かごしま黒豚、スナップえんどう、きんかん、新ごぼう)かごしま茶バーガー(さつまいも、そらまめ、新ごぼう、かごしま茶)金柑バーガー(黒さつま鶏、きんかん、新ごぼう)

【中国料理】
C〈中国料理〉鹿児島産ピーマンの中華オイル和え 蒸し魚に添えて

C〈中国料理〉鹿児島産ピーマンの中華オイル和え 蒸し魚に添えて

⑨新ごぼうと山芋の蒸しスープ(新ごぼう)鹿児島産ピーマンの中華オイル和え 蒸し魚に添えて(=C ピーマン、ばれいしょ)

【製菓製パン】
D〈製菓製パン〉大将季のタルトレット

D〈製菓製パン〉大将季のタルトレット

⑪大将季のヴェリーヌ(大将季)大将季のタルトレット(=D 大将季)鹿児島産そらまめのブランマンジェ(そらまめ)

試食会では、鹿児島県東京事務所の富永信一所長、鹿児島県経済農業協同組合連合会園芸事業部東京営業所の日高誠博所長、同校の服部幸應校長が出席した。

日本料理の「かごしま茶バーガー」は、さつまいもや新ごぼうをかき揚げにして、ライスバーガーにするという意表をつく和食を完成させた。また、製菓製パンで使われた大将季は果肉だけを使うのではなく、渋みや苦みも柑橘系の魅力と捉え、ジャムにするなど皮の部分も使用している。

昨年12月に栄養士科の学生に向けておこなわれた「かごしまの『食』体験授業」では、はじめに鹿児島県の魅力を知ってもらうため、鹿児島県東京事務所から鹿児島の農産物などが紹介された。この日の授業で使用された実えんどうの「まめこぞう」は、グリーンピースが嫌いという子供が多く、給食でも残されることが多いことから、甘くて豆くさくない品種を作ろうという思いから生まれた。名づけ親は地元の農業高校生だ。

調理実習では「まめこぞう」とグリーンピースを食べ比べて味の比較を行った。学生は「まめこぞう」をさやから取り出して鍋で茹でたものと、冷凍のグリーンピースを食べ比べた。また、両者をジャムにしたものも用意され、クラッカーにつけて試食を行った。

授業では「まめこぞう」を栽培している生産農家とオンラインで交流が行われ、学生からは「まめこぞうは収穫後に、どのような状態で保存されているのか」「これまで栽培してきて苦労したことは」などの質問が交わされた。

■かごしまの『食』体験授業を受けて 栄養士科・宮内花菜さん

授業でまめこぞうとグリーンピースを食べ比べたところ、まめこぞうはとても甘く、豆臭さも無く、すごく食べやすかったです。私は幼い頃からグリーンピースが苦手でしたが、まめこぞうは美味しくいただくことができました。鹿児島県の子供たちは学校給食を通して、まめこぞうを食べているのが、うらやましいと思いました。

授業ではオンラインでまめこぞうの生育状況を確認したり、栽培農家の方から大変なことやうれしいことを聞くことができました。生産者の方とお話しする機会が少ないため、食に携わる栄養士としてとても参考になりました。

そして1月に行われた調理ハイテクニカル経営学科の「かごしまの『食』体験授業」では、西洋料理、日本料理、中国料理、製菓製パンの各ジャンルで実習を体験。西洋料理では「新ごぼう」と「黒さつま鶏」、日本料理と中国料理は「新ごぼう」、製菓製パンでは「大将季」を使って、それぞれ鹿児島の食材の特性を活かしたメニューを完成させた。

■かごしまの『食』体験授業を受けて 調理ハイテクニカル経営学科・鈴木喜衣さん

授業では鹿児島県産の「新ごぼう」と他県のごぼうの食べ比べを行いました。「新ごぼう」はクセがなく、みずみずしく感じました。

私は西洋料理を選択しており、授業では「黒さつま鶏のグランメール」と「新ごぼうのスープ」を作りました。スープは新ごぼうとくるみオイルの相性が良かったです。実習後に日本料理など他の料理を担当した学生と話し合いましたが、どのメニューからも鹿児島の食の力強さを感じることができました。

このような貴重な機会を頂き、今後、調理師として調理に携わる際に、食材を選ぶことの大切さを学ぶことができました。卒業後の就職先でも、今回の授業を活かしていきたいと思います。

学生から授業を受けた感想を聞いて、鹿児島県東京事務所の富永信一所長は「今回の授業は学生の皆さんに鹿児島の農業や食材について知ってもらいたいという目的で企画した。鹿児島の食材に興味を持ってもらい、大変にうれしく思う。将来、栄養士や調理師となり食材を選択する時に、今回の授業を思い出して、鹿児島の食材を選んで頂ければ大変ありがたい。今後もこのような体験授業を続けていきたい」と語った。

服部栄養専門学校 服部幸應校長

「かごしまの『食』体験授業」では、新たな食材に触れる機会を得て、食材の持つ力を改めて感じました。日本の食料自給率が下がる中、北海道や東北、九州は高い自給率を誇っており、今後の日本の食を考える際の参考になるのではないでしょうか。

そして「かごしまの『食』発表会」では食材の持っている味をいかに引き出すかがテーマ。そうした意味では鹿児島が持っている力を、食材からうまく引き出し、活かせたように思う。学生も鹿児島の食材に触れたことは食のプロになってからも忘れないと思う。

本校の先生方も学生と意見を交わしながら、頑張ってメニューを考え、鹿児島の食材が持っている強い力に負けないよう、うまさを引き出すことにポイントを置いていました。

今後、さらに感激するようなメニューづくりにつなげて、それが全国に広がれば鹿児島県と良い関係が生まれると思います。生産者の方々には鹿児島産ということに誇りを持って頂き、さらに良いものを作ろうという気持ちを忘れないで頂きたいと思います。

地元・渋谷区と連携 学校給食と中学校部活動で

服部栄養専門学校では、地元である東京都渋谷区との連携にも力を入れている。同校が小中学校の学校給食の監修を行う「渋谷ワンダフル給食プロジェクト」に取り組むほか、今年4月からは区立中学校における「シブヤ『部活動改革』プロジェクト」において、料理に関する部活動に参画する。

日本食の素晴らしさと海外の食文化を伝える

9月の渋谷ワンダフル給食「真鯛のアクアパッツァ」

9月の渋谷ワンダフル給食「真鯛のアクアパッツァ」

「松坂ポークのバーベキューマリネ オーブン焼き」「油淋鶏」「真鯛のアクアパッツァ」「アッシパルマンティエ」「豚肉の唐揚げあんかけ」…昨年6月から渋谷区立の小中学校全25校に向けて提供されている献立の数々は、「渋谷ワンダフル給食プロジェクト」によるものだ。

「渋谷ワンダフル給食プロジェクト」は、同校と区が協働し、区立小中学校の学校給食を通じ、食への関心や理解を深め、改めて「食」に感謝する心を育む「食育」の取組。日本の伝統的な食文化を継承しつつ、諸外国の食文化を体験できるよう、多彩な献立を展開する。同校の調理師科、栄養士科それぞれの教授陣が監修。味はもちろん、見た目や香り、食感といった、五感で楽しむレシピを開発している。

同プロジェクトではレシピ開発のほか、食に関する出前授業、区内栄養士が参加するワンダフル給食の試食会、同校の服部幸應校長による食育動画の配信等を行っている。給食の可能性を広げながら、給食現場の栄養士や調理員の育成、子供の一生涯に渡る「食習慣」を身につける取組として注目される。https://swslp.tokyo/

文化部で要望の多い「料理」「スイーツ」

部活動の場は同校の実習室

部活動の場は同校の実習室

区が推進する中学校の部活動改革において、同校は“料理とスイーツ”の部活動で参画する。

区では、8校の区立中学校の生徒たちが参加できる合同部活動が今年4月から本格始動する。(一社)渋谷ユナイテッドが主導する「シブヤ『部活動改革』プロジェクト」によるもので、区内の企業や大学・専門学校との協働により、生徒の希望する部活動の実現と、教員の働き方改革につなげる。運動部・文化部合わせて10種目があり、同校は文化部の1つ「料理・スイーツマスター部」に携わる。

事前に区内の中学生を対象に実施したアンケートでは、文化部の中で「料理・スイーツ」への要望が上位となった。そこで区では部活設立に向けて“料理界の名門”(区担当・言)である同校に打診。「子供たちの成長のひとつの機会である部活動に、本校の教員や施設を提供して携わることができれば、行政と学校との新しい協働のかたちが実現できる」として、同校では参画を決めた。

「料理・スイーツマスター部」は、同校の実習室が活動の場。調理のプロフェッショナルを養成する専門学校に在籍する、西洋料理・日本料理・製菓・製パンの専任教員が指導を担当。スケジュール管理や区や保護者との連携を担う「部活動マネージャー」も、同校の職員が担当する。本格的な調理の実習の環境の中で、生徒たちは主体性を育み、相互の教え合いが自然と生まれる部活動ならではの活動に取り組む。

2回ペースの活動の中で、料理の基礎から段階的に知識や技術を身につけ、レシピはもちろん、調理の技術や衛生の意識、食材や文化への知識、食育といった、幅広いテーマを扱う。「料理や菓子作りに興味がある中学生のやる気を刺激するような、楽しく学びになるような実習」を目指す。

服部幸應校長 公式YouTubeチャンネル開設

服部幸應校長は自身初となる公式YouTubeチャンネル「服部幸應チャンネル」を2月13日に開設した。週1~2回のペースで更新。幅広い世代に向けて、食の大切さや各地の美味しい食を様々な切り口で紹介する。

動画内では著名人とのコラボも実施。第1回目はファッションモデルであり、YouTubeでも活躍しているマギー氏をゲストに迎え、美容と食について語っている。

ビーン・トゥー・バー・チョコレートの作り方など食に関する豆知識が詰まった動画のほか、「食に興味を持ったきっかけ」では、小学校4年生の時に父親から朝食と昼食を作るように言われ、試行錯誤の末、喜ばれたことなどが語られている。
※YouTubeで「服部幸應」と検索

教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2022年3月21日号掲載

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最新号見本2024年12月03日更新
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