災害で亡くなった人で圧死・窒息などの直接要因以外の死亡を「災害関連死」とする言葉が初めて使われたのが、阪神淡路大震災だとされる。それから27年目を前にした1月11日、災害関連死で最多の要因だったのが誤嚥性肺炎だったことから、災害時のオーラルケアの重要性を専門医らが訴えたセミナーが、神戸市の神戸市危機管理センター会場とオンラインで、同市とジョンソン・エンド・ジョンソン㈱の共催で開催された。
「今日からする・備える口腔ケア」と題した“健口セミナー”。災害時を中心にした神戸市が取組む健康行政についての説明や、被災地で口腔ケアに携わった専門医からは災害関連死を防ぐポイントや日常からできる口腔ケア対策などのレクチャーが行われた。
同市健康局歯科専門役の足立了平氏は阪神淡路大震災の災害関連死について、死者6434人のうち1000人ほどが認定され、その24%が肺炎だったと説明。一般に高齢者の肺炎では80%が誤嚥性肺炎であることから、災害時の劣悪な生活環境でも口腔ケアが重要であること、日頃から口腔内を健康的に保つように心掛け「災害時に強い口」作りを行っていくことを提唱。高齢者施設では専門的な口腔ケアを施したことで、肺炎の発症が40%軽減したという報告があることなどを紹介した。
内科医でNPO法人日本病巣疾患研究会副理事長の今井一彰氏は、口腔内には約700種の細菌がいて糖尿病をはじめ様々な病気を引き起こす原因になると言われることから、口腔ケアが大切であることを指摘。近年はコロナ禍の対策としてマスク着用が欠かせない反面、口呼吸が様々な病気を引き起こすことについて注意喚起。口呼吸は息がしやすいが口腔内を乾燥させ、口内環境を悪化させるためだ。
続いて「あいうべ体操」を紹介。口を開けて「あ~い~う~ベ~」と大きく口を動かすだけ。1日30回が目安で、口呼吸が改善され、舌圧が上がり唾液の分泌が増えるので誤嚥を減らす効果がある。さらにマウスウォッシュ、ブラシやフロス、鼻うがいやマウステープなども口腔ケアに役立つこととして紹介した。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2022年3月21日号掲載