「いじめの重大事態」については「確定」より「疑い」の段階で調査することが求められているが、57%の教育委員会が「学校の報告」から調査を開始すると回答、「疑いが生じた段階」からは7・5%だった…文部科学省が全国の都道府県・政令指定都市67教育委員会に行った「いじめ重大事態調査に係るアンケート調査」の結果から、教育委員会の第三者委員会設置状況など取組の実態が明らかになった。
2月末に開催された文科省の第4回いじめ防止対策協議会の資料で公開された。47都道府県と20政令指定都市、合わせて67教育委員会(以下、教委)を対象に実施したアンケートのまとめ。
文科省の「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」(2017年3月、以下ガイドライン)は重大事態について、「事実関係が確定した段階で重大事態としての対応を開始するのではなく、『疑い』が生じた段階で調査を開始しなければならない」と明示。さらに被害児童生徒や保護者から申告があったときは「重大事態が発生したものとして報告・調査等に当たること」と述べている。
重大事態調査の開始の判断については、「児童保護者の申し立て」によると回答した教委は22・4%、「疑いが生じた段階で」は7・5だった。最も多かったのは「学校の報告を受けて」が56・7%、次いで「学校と教委の協議によって」が32・8%だった。
「児童生徒や保護者等からの要望で調査を開始することはあるか」では、「ある、あり得る」が65・7%。さらに「要望や訴えを確認し、総合的に判断する」は11・9%で、教委の8割近くは「ある」または「可能性がある」とみられる。
調査の主体を問う設問で最も多かった回答は「教委が調査主体を判断」で約半数の49・3%。一方で「すべてを第三者委員会」と回答した教委は6・0%、「自殺等は第三者委員会」は14・9%、「学校主体では十分な結果とならない場合は第三者委員会」は23・9%。結果判断を含めても第三者委員会を優先とする教委は44・8%で半数に満たなかったが、「被害児童生徒や保護者の意向で判断」との回答も2割以上あった。
重大事態調査にあたる常設の第三者委員会を教委に設置しているのは86・6%。その公平・中立を確保する方策としては、半数近くが「職能団体からの推薦」とし、「利害関係がある委員は調査に加わらない」も約3割だった。
学校主体調査の委員会では「SC・SSW・学校医」と「調査時に職能団体から推薦された委員」がほぼ同数で合計9割近く。他には「教委に所属する専門家等」、「弁護士・臨床心理士各1名の原則を設定」、「学校が主体で委員を選定」などがあった。報告書の作成は「学校」が7割にのぼり、「専門家」は2割に留まっている。
重大事態調査についての、学校や教委の体制や運用面の課題と考えられることでは、「複数案件を実施するための専門家の確保や事務局の体制整備」が最も多くの4割近く。次いで「調査や対応が長期化・複雑化する」、「財政的に厳しい」、「事務量の多さ、長期化」などがそれぞれ3割以上だった(表参照)。
またガイドラインの他に「答申から公表までの手順書、補足マニュアル、解説等」、「対応事例集」、「Q&A」などが多くから求められていた。さらに「国による第三者調査機関の設置・委員リスト」、「重大事態に特化した全国での研修」などの要望もあった。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2022年3月21日号掲載