GIGAスクール実現と共に今後の教育データの有効活用が課題となっている。その一環で、児童生徒の学校健康診断(学校健診)の個人情報を電子記録として活用する仕組みであるPHR(Personal Health Record)構築を検討するため、文部科学省は1月26日、「学校診断情報のPHRへの活用に関する検討会」を開催。検討会は養護教諭や保健主事等の運用主体となる関係者で構成され、2023年度末までに専用サーバの管理・運営や効果的なPHR実施の在り方等を検討する。
検討会はオンラインで開かれ、藤村裕一・国立大学法人鳴門教育大学大学院遠隔教育プログラム推進室長が座長に指名され、委員には小林幸恵・全国養護教諭連絡協議会会長、高橋邦夫・合同会社KUコンサルティング代表、半澤郁子・全国学校保健・養護教諭担当指導主事会会長、東邦裕・全国学校保健主事会会長が参加した。
初等中等教育局健康教育・食育課の三木忠一課長は冒頭、PHRの目的について「情報をデジタル化することで長期に活用できる、教職員には子供の多様な情報の一つとして“教育のデジタル化”の文脈で扱うことになる」と説明した。健康診断結果等は、紙媒体であることを前提に現行では5年間保存期間が義務付けられている。
藤村氏は校務支援システムの開発等にかかわってきた経験から「教育データの利活用について検討したい」とあいさつ。また東氏は中学校長を14年務めた経験から、「(校務の推進は)管理職のリーダーシップが鍵であることを発信したい」と述べた。続いて文科省・事務局の概要説明が行われた。
自由質疑では各委員から、長期に運用されることになる専用サーバについて、また学校現場の運用体制に関する多くの質問や懸念、意見が伝えられた。セキュリティへの懸念や現場で入力等を担う教職員へのフォロー・ヘルプ機関(例えばヘルプデスクなど)の創設などが求められた。またデータ入力は養護教諭だけが担うのではなく、「チーム学校」として取り組む体制づくりが提案された。これらの意見は、今後の実証運用の中で検討される。
学校健診結果の保管方法は、公立では「すべて電子」(26・9%)、「一部は電子、一部は紙」(52・6%)で、何らかの電子化は8割近くに上っている(2021年5月現在・文科省調査、以下同)。しかし「すべて紙」は20・4%だった。
一方、私立では半数以上が「すべて紙」(51・4%)と回答。「すべて電子」は12・7%、「一部は電子、一部は紙」が30・7%で、電子化はあまり進展していない。さらに国立は「一部は電子、一部は紙」が57・1%で最も多く、「すべて電子」と「すべて紙」が同率で16・6%だった。
本人・保護者への健診結果の返却方法は、全体の9割が「紙で返却」。内訳は公立が97・3%、私立は92・9%、国立87・6%だった。
健診結果の電子化方法としては養護教諭が記録用紙をパソコン入力しているケースが多く、公立の85・9%、国立の63・3%だった。一方、私立では養護教諭は34・6%で、31・7%は外部機関に依頼している。公立では健診結果の管理には、63・5%が統合型校務支援システムを使用、また20・2%が保健単独の校務支援ソフトを使用している。
公立では53・5%がシステム・ソフト内で共通の児童生徒IDで管理している一方、学籍番号・出席番号、氏名等のID以外の方法での管理は43・4%あった。ID以外の管理方法は私立が79・6%、国立は82・5%に上っている。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2022年2月21日号掲載