学校のトイレで連想される臭い・汚いなど「5K」の課題を解消し、清潔で健康的なトイレ環境づくりを提案してきた学校のトイレ研究会(河村浩事務局長)が先ごろ、発足25周年を迎えたのを機に、これまでの取組等を紹介するオンライン説明会を開催。後回しにされがちなトイレ環境の改善だが、望ましい排便など子供の健康維持に影響するばかりでなく、自然災害の発生時には学校は地域の避難場所となることから、早急な課題解消を唱えている。
同会が活動を開始した1990年代の学校トイレの多くは和式、いわゆる「5K(臭い、汚い、怖い、暗い、壊れている)」の状態だった。教職員を対象に行った「児童・生徒のために改善が必要と思われる」もののアンケート調査で、「トイレ」は「校舎の耐震化」や「パソコン・電子黒板」を毎回上回る一番に選ばれている。(下の図参照)
トイレの「5K」などの問題で学校でトイレを我慢してしまう子供が少なくない。2018年にその悪影響について医師51人に聞いたところ「影響がある」という回答が94%だった。
全面的に洋式化し温水洗浄便座を設置した大阪・和泉市の小学校の5・6年生児童(166人)に、改修前後の調査(2010年)したところ、「トイレを我慢することがある」と回答した児童は、改修前の75人から改修後は31人で半分以下に減少。トイレを我慢したことがある児童の理由は「汚くてにおうから」が65人から6人に、「和式便器がいやだから」が54人から3人にと大幅に減少した。
従来から「大便をするとからかわれる」ことが、大きな理由とされてきたが、同調査ではそれを理由としたのは改修前ではわずか7人、改修後はゼロだった。
災害発生時には地域の避難場所となる学校。避難者の中には高齢者や体の不自由な人など多様な人々が含まれることから、学校建築・施設のバリアフリー化が求められる。
先ごろ文科省は令和7年度までの今後5年間で、避難所に指定される全学校に車椅子使用者用トイレの整備を目標にする。令和2年5月現在では校舎内65・2%、体育館36・9%の整備率。
同会は改修を通して地域住民も巻き込んだエコ学習やUD(ユニバーサルデザイン教育)の教材となるよう提案したいと展望している。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2021年11月22日号掲載