東京で今年開催されたオリパラでは、選手村の食事と共に日本の食文化が世界に発信された。和食調理をより深く、実践的に学べる学校法人水野学園東京すし和食調理専門学校は、徹底した感染症対策を実施。学科のオンライン授業と対面実習を併用し、コロナ禍に対応している。そこで今年度の取り組みについて渡辺勝校長に聞いた。
今年度も厳しいコロナ対策を実践中の同校。学科の授業は4月の第1回のみ学校で席の間隔を空けて実施、そして9月前期最後の定期試験も学校で。それ以外はオンライン授業。モニター画面には学生全員の顔が写り、チェックは教務の先生が常に行う。「先生と学生が1対1という意識が生まれ、授業に集中できる効果も出ている」という。調理実習は学校で行うため手指消毒、検温計測、マスク装着。試食は無言で口に入れ、再びマスク装着で黙食をと徹底した。
昨年から体験入学の工夫やイベント等で努力を続け、高校生の入学も微増傾向に。アルバイト先の激減で困窮する生徒をサポートするコロナ対策奨学金制度も実施。休んでいる学生に対しても、調理技術の動画を作成し提供。在校学生に対する手厚いサポートを実施している。
昨年開設の3年制課程「和食研究科」の学生は今年2年目。その中の有志が集まって部活動「定食部」を展開中。授業外で毎週土曜日に活動している。一流店でもテイクアウトや定食が増えている今、この活動は卒業後に役に立つ。アフターコロナ、ウィズコロナという観点から、就職後学生が困らないよう技術指導をしている。
10月後半から「こども定食部」、来年2月の第3弾はキッチンカーを使用しての部活動を行う。和食文化伝承をビジネスとして捉え、幅広い層に和食の良さを伝えていく。コロナ禍はピンチではなくチャンスと前向きに捉える渡辺校長は、「一汁三菜の栄養バランス、出汁文化、免疫力を高める発酵食品効果等和食需要が高まる今、お弁当、定食といった身近な和食を多様的な内容で、来年4月正規カリキュラムにしていく」と語る。将来を見据えた早目の対策だ。
令和5年4月「日本さかな専門学校(認可手続中)」を神奈川県三崎漁港の真横に開校する。魚養殖、仲買流通、魚調理等水産系の川上から川下まで学べ、コースは3年制と4年制。「漁獲量が減って、魚を食べない日本人が増えてきた現状は危機的、和食全体の衰退に繋がるのではないか。魚好きで情熱のある人に実務と即戦力を身につけてもらう。日本は排他的経済水域が広く、可能性は広がっている」と語る。
最後に「日本人は飲食店での食事のニーズが強いことが、コロナ禍で浮き彫りになった。また飲食業界の力を実感した。必ず和食バブルがやって来る。そのために学生一人ひとりが、今を前向きに楽しみ、勉強し、確実に知識や技術を身につけて準備を怠らないようにして欲しい」と語った。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2021年10月18日号掲載