新任校長として着任した初めての職員会議では、どのような挨拶が効果的でしょうか?
ある校長は「先生方がこの学校の生徒のために一生懸命やったことについて最終的な責任は校長がとります。思いっきりやってください」と述べました。また別の校長は「あえて結論を先に申し上げておきますが、私の今年の目標は、一年後には先生方が安心して働ける職場にすることです」と語ったそうです。
どちらも当たり前の内容ですが、その一言で教員は動いたのかもしれません。
はじめはどんな校長だろうかと緊張していたはずです。そこで冒頭のような挨拶をすることで、安心して働いてもらうことが目的でした。特に学校が荒れている時は、教員の心と身がともに参っているので、安心して働ける職場にならないと休職者が多発します。リーダーは最初に発するメッセージが重要です。
管理職として、初任者や転勤1年目教員に対して特に配慮している点はどんなところでしょうか?
ある管理職はあえて初任者が年度初めの初任者研で不在の時に、教育委員会発行のリーフレット等を使い、先輩教員たちに初任者に対する援助や見守りをお願いしていました。
また、「異動で次の学校に赴任した先の校長から『前任校では何を教わってきたの?』と言われない教員を育てたい」。そして「今度赴任してきた教員は中堅で使えると評価される、教育委員会やどこかの組織から選抜される教員に育てたい」と毎年話しています。
これらの話を初任者研等で学校を不在にしている初任者は知りません。その一方、2年目教員は「校長は、昨年自分たちが初任者の不在時に、このような話をしてくれていたのだ」と初めて気づくのです。負担にならない程度に期待感を伝え奮起させたのです。
今の若い管理職に対してどんな点が心配ですか?
若い校長の下で働く副校長・教頭の年齢が若くなっているのが心配です。どういう力量の人がつくかによって、校長がどれだけ苦労するかが決まります。学級担任を10年も経験しないまま教頭に抜擢され、危機管理の経験が乏しいまま教頭になり苦労する例もあるようです。
副校長・教頭を未経験のまま教育行政から校長になる例もあります。教育行政での感覚をそのまま学校現場に持ち込むと、教員が混乱し仕事が回らなくなることが考えられます。そのような状態に陥らないためにも、副校長・教頭の十分な経験は必要です。
子供を指導する際には、背後に保護者が立っているつもりで話すことが大切です。子供だからといって暴言を吐いたりすると問題になる時代です。小学生くらいになると、学校で担任から言われたことを自宅に戻り親に話しますが、その際に子供は「自分に都合の良いように」言います。保護者によってはその話を丸飲みし、時に「尾ひれ」をつけて学校に乗り込んでくるのです。
以前であれば、子供は親にも教師にも怒られていました。最近の子供は、親から怒られていないので教師の叱責にはショックで、立ち直れない子供もいるそうです。中学校教師にしてみれば小学校教師の言葉遣いは恐ろしいくらい丁寧に思えると言います。今の時代はそのくらいでないと、保護者や地域が納得しないのかも知れません。
中学校では保護者対応は、担任→学年主任→生徒指導主任→副校長・教頭の順に組織的に対応するのが一般的です。しかし小学校は担任→校長へと直接問題が上がってきます。その結果、校長自身がメンタルヘルスを悪化させるケースが増えているようです。
筆者=土井一博(どい・かずひろ)順天堂大学国際教養学部客員教授
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2021年10月18日号掲載