文部科学省の調査によると、浸水・土砂災害等危険地域に立地する全公立学校数は、浸水の危険地域に7476校(全公立学校の20・0%)、土砂災害は4192校(11・2%)。このうち避難訓練を実施している学校は、浸水危険地域の学校の71・9%、土砂災害危険地域の学校の67・6%だった。文科省は各学校に対して「学校の『危機管理マニュアル』等の評価・見直しガイドライン」に基づく避難確保計画作成、避難訓練の実施等ソフト面の充実、ハード面では教育委員会等に「学校施設の水害・土砂災害対策事例集」の周知を呼びかけた。
調査は全国公立の幼稚園、認定こども園、小・中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校が対象(全公立学校数は3万7374校)。浸水の想定区域(洪水、雨水出水、高潮)に立地し自治体の地域防災計画で要配慮者利用施設に位置付けられた学校(浸水危険校)、土砂災害警戒区域(急傾斜地の崩壊、土石流、地滑り)に立地し自治体の要配慮者利用施設に位置付けられた学校(土砂災害危険校)。
浸水危険校は7476校あり、そのうち避難確保計画を作成している学校は6365校(85・1%)、同計画に基づく避難訓練を実施している学校は5375校(71・9%)だった。防災教育を実施している学校は6696校(89・6%)に上った。
また土砂災害危険校は4192校で、そのうち避難確保計画を作成している学校は3313校(79・0%)、同計画に基づく避難訓練を実施している学校は2832校(67・6%)だった。防災教育を実施している学校は3627校(86・5%)だった。
さらに浸水と土砂災害危の危険区域に位置し自治体の要配慮者利用施設として位置づけられた学校は493校(1・3%)だった。
避難訓練の実施実は県による差が大きい。浸水危険校での実施率は徳島県が100%、他に80%以上だったのは宮城、茨城、富山、愛知、広島、山口、愛媛、大分、鹿児島。土砂災害危険校では徳島が97・8%でトップだったのに続き、実施率80%以上だったのは岩手、富山、大阪、岡山、広島、大分、鹿児島だった。浸水危険校での避難訓練実施率の高い県は、土砂災害危険校での実施率もほぼ同様に高い傾向がみられた。
令和元年度の台風15・19号、昨年度7月豪雨など近年の激しい気象災害で学校施設の被害が多発しているのを受け、文部科学省は先ごろ、ハード面を中心にソフト面も含めた教育委員会等の災害対策に向け、全国各地の取組みを紹介する「学校施設の水害・土砂災害対策事例集」(令和3年6月)を作成した。
止水版で敷地内への浸水を防ぐ東京都大田区立大森第四小学校をはじめ「水害から学校を守る」事例が8事例、校庭に貯水機能をもたせる大阪府寝屋川市立西小学校をはじめ「水害から地域を守ることに学校が貢献する」3事例、構造体を補強する広島県立五日市高等学校をはじめとした「土砂災害から学校を守る」3事例が掲載された。
他に通信の確保の重要性や、避難訓練についてのアドバイス等のコラムも収録。参考資料も付属している。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2021年7月19日号掲載