今回7回目を迎える「アクサ ユネスコ協会 減災教育プログラム」は、活動報告とフォーラムを2月19日、20日にオンラインで開催。同プログラムはこれまで年間20~30校、延べ163校への研究助成、研究実践の参加者は保護者・地域住民を含め6万人以上に及ぶ実績がある。
日本ユネスコ協会連盟理事の及川幸彦・東京大学大学院教育学研究科附属海洋教育センター主幹研究員は開会のオリエンテーションで、防災教育の意義は「最終的に“命が守れる”ことであり、子供にその知識・技能を養うこと。アプローチは様々だが、子供が主体性や当事者意識なく知識のみ学んでも、学びに魂が入るだろうか」と課題を提起した。さらに「子供が学校で過ごすのは生活全体の10数%にすぎず、地域のNPO、各種サポート組織との連携と、子供自身の自立、自助精神が欠かせない」とした。
「震災遺構(被災校舎・気仙沼向洋高校旧校舎)から学ぶ」としたフォーラムでは、同校舎をそのまま展示会場とした「伝承館」から、館長・佐藤克美氏がオンラインで登場し、モデレーター役の嵩倉美帆氏(東京大学大学院教育学研究科附属海洋教育センター特任研究員)と、館内のVR映像によって隅々まで紹介した。
2019年3月10日オープンした同館。佐藤館長は同年1月から任命され赴任。それ以前、被災以降は救護と市民病院周辺のがれき撤去等の復興作業に関わってきた。災害間もないころの撤去作業で目にした、避難途中で津波に襲われたと思われる小学校低学年の児童2人が、手をつないだまま亡くなっていた姿が忘れられないと語った。
「記憶の風化」が言われる一方、つらい記憶を忘れたいという気持ちもあると言う。
同館にはあえて風化していく姿を見せるため展示している部分がある。押し寄せた津波が校舎の窓を突き破って、どこから流されてきたか見当もつかない家具や本が教室や廊下にまで散乱。10年の歳月で少しずつ風化してきたそのままの姿を、あえて手をかけて修理復元せずに見せている。
地元の人々が「語り部」として活動。多くは高齢者で平均年齢は73歳だが、現在は有志の高校生24人が加わり、総勢80人が活動している。
生徒は自発的に参加しているため活動は積極的。入館者に自分の言葉を「聞いてもらえる」喜びや、役に立っている肯定感が生まれ好循環ができている。
被災時は幼稚園児で正確な記憶や認識に欠ける部分があっても、高齢者の体験談を聞きながら自分の体験として吸収し「シナリオ通りでなくても自分の言葉で伝える」よう館では指導しているという。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2021年3月15日号掲載