3か月の病気休暇(以降、病休)があけて、この2月から学校復帰する予定の小学校のA教諭。代替教員が勤務しましたが、任期は1月一杯です。そんな事情もあり、校長が本人の健康状態を確認するために1月下旬に学校に呼び出し、その時初めて本人が心配な状況だと判明しました。
校長との面談中のA教諭は、うつむいたまま落ち着かない様子。聞かれたことに口籠るばかりで、たまに応える声もよく聞き取れない力のないものでした。
通常、最低6か月間の休職の場合は復帰予定の3か月前くらいに都道府県教育委員会の健康審査会にかけられ、専門医のOKが出た後、教育委員会が指定した「職場復帰訓練」を経て復職に至るのです。しかし90日の病休の場合には、職場復帰訓練の期間が正式には設けられていないため、復職、即、通常勤務につくことが求められます。A教諭のケースでは、2月では代わりの教員が見つからないために、最悪、1名減の形で3学期一杯、現有戦力でA教諭の分をやりくりしなければならないのです。
病休者が職場復帰する際には、様々な課題がクリアになっているかを確認しながら進めることが必要です。特に復職1か月前には管理職が本人との面接の機会を設け、あと1か月で復職できる見通しかどうかを確認すること。困難と思われる場合は、管理職が医療機関に直接出向き、今後の見通しについて判断を仰ぐことが肝要です。病休は休職と違い職場復帰訓練がないので、復職、即、戦力として通常勤務が求められるためです。今回のケースでは、この「確認作業」を怠ったために復帰直前で初めて状況が判明したのです。
注意したいのが、医師は医学的見地から「復職OK」と判断しても、職場の管理職としてはOKが出せないケースがあること。例えば、子供とのトラブルが要因で病休に入った場合、中には復職後も子供の前に立てない教員もいます。
さらに、対管理職や同僚との「軋轢」や「ハラスメント」等が原因で病休に入った場合、復職には困難を極めます。依然として管理職や同僚が在籍している同じ職場に復帰し、毎日顔を合わせるからです。特に管理職のパワハラ等が原因の場合は校長自身が「当事者」になるので、誰が間に入り、問題解決のイニシアティブをとるのか、校内の人間では解決が難しいケースの筆頭です。そんな時こそ、メンタルヘルスカウンセラーの出番です。
そのあたりの問題がクリアになっていない状態では、本人は安心して職場復帰が出来ないのです。
3か月間、医療機関に通院していても、稀に回復が思わしくないケースもあるようです。その辺の事情について本人に話を聞いてみると、通院している医療機関の中にも、3分診療、あとは投薬だけというケースがあるようです。その確認のためにも、残り1か月の時点で本人との面接機会を設け、回復具合を管理職の「五感」を駆使して確認してみることです。
回復が思わしくないため転院を希望する人がいますが、その場合には前の医療機関からの「紹介状」が必要になってきます。医療機関によっては、転院すること自体を快く思わないケースもあるようなので、養護教諭等に相談しながら信頼できる医療機関を受診することをお勧めします。
このように病休から復職の際には、①専門医の職場復帰の許可が下り、②病休に入る原因となった問題が解消され、③職場の環境調整や協力体制が整った中で、職場復帰をさせることが何よりの再発防止策になるのです。特に③については、校長が普段から教職員からどれだけ信頼されているかを試される機会になるのではないでしょうか?
筆者=土井一博(どい・かずひろ)順天堂大学国際教養学部教職課程客員教授、教職員メンタルサポートネットワーク協会代表、埼玉県川口市教育委員会教職員メンタルヘルスチーフカウンセラー
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2021年2月15日号掲載