埼玉県上尾市立富士見小学校(市河利之校長)は、全校児童685人の適正規模校。毎年11月下旬に「富士見っ子健康集会」(以下、健康集会)を開催し、児童らが中心となって行われる演劇を通じて健康への理解を深めている。今年度は、感染症対策の指導にも全教員が一丸となって取り組んだ。
健康集会では、同校の学校歯科医と作成した台本を使って保健委員会・給食委員会・体育委員会に所属する小学5・6年の児童らが中心となって1時間程度の演劇を作り上げている。この学校行事は長年続いており、昨年度には38回目の開催を迎えた。委員会に参加する児童はみな、演劇をするのは初めてだが、毎年上学年の演劇を観劇しているため、その完成度には年々磨きがかかっている。
保健委員会が「健康」を、給食委員会が「栄養」を、体育委員会が「運動」をそれぞれテーマにして、自分たちが担当するパートの劇を作り上げてくる。劇中では、全校児童も参加できるクイズなども行われる。
コロナ禍の影響もあり、例年よりも縮小した形式となるが、今年度も開催予定だ。今年度の健康集会は、Zoomによる遠隔放送を利用している朝会の一環として、30分程度の映像の制作を進めている。テーマは「感染症予防」だ。
休校期間中に感染症対策の研修動画を作成。感染症対策下の授業時の挙手発表の方法や、歯みがき後のうがいでは水を低い位置から吐き出すなどの動作を教員が実演。児童もすぐに感染症対策に取り組めた。
休校明けの6月以降、休み時間中も校庭で遊ぶ人数が制限された。「外で遊べなくなってつらい」と泣いた児童もいた。「やりたいのにできなくなる」というストレスを回避するため、同校では分散登校が終了した7月から、「シエスタ(昼寝)」を昼休みに導入。換気をしたまま遮光カーテンを閉め、リラックスできる楽曲が毎日流れる中、全児童が机上で顔を伏せ、15分間心身を休息させている。児童も次第に慣れ、高学年の児童などからは、この習慣で午後の授業に集中できるようになったという声もある。
棚澤養護教諭は、「文章で伝えるだけでは不十分。教員全員が主体性をもって『感染症対策の研修動画を作ろう』と動いてくれたことが、今年度の実践につながっている」と話した。ピンチをチャンスにしているのが同校の強みだ。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2020年10月19日号掲載