人に病気を起こすコロナウイルスの大部分は、飛沫を介して気道に感染します。
従来から知られている風邪の原因となるコロナウイルスは、鼻腔から喉頭までの上気道に感染してかぜ症状を引き起こします。免疫がつきにくいため、2~4年おきに冬季を中心に流行を繰り返してきました。
新型コロナウイルスもこのような特徴をもっている可能性があると考えられますから、この秋から冬にかけての季節には、特に学校内での予防対策にも注意しておくべきでしょう。
冬季は空気が乾燥しやすいため、飛沫の水分が軽くなることでより小さな飛沫となって室内を漂う「マイクロ飛沫」でのエアロゾル感染を予防する必要があります。そのためにも、1時間に2回以上、数分間窓を全開にして、空気を入れ替えるなどの換気に努めましょう。
よく「若い人は重症化しないから大丈夫」と考えている人もいるようですが、20代や30代でも重症化して亡くなっている人もいます。決して油断できない感染症です。また、新型コロナウイルス感染症の回復後にも、倦怠感や関節痛、胸痛、呼吸苦などの慢性症状が残る人がいることも報告されています。
他にも、嗅覚障害や味覚障害、めまい、結膜充血、頭痛、脱毛、さらに聴覚障害や記憶障害も引き起こされることがあることもわかってきました。
新しい感染症であるため、これらの後遺症がどのくらいの頻度で発生し、またどれくらいの期間こうした症状が続くのかは未だにはっきりしていません。
新型コロナウイルスが流行し、多くの患者を出している米国からの報告では、特に基礎疾患のない18歳から34歳の年齢層の人でも、「19%の人で罹患前の健康状態に戻っていない」との調査結果もあり、若く健康な人でもこのような後遺症と無関係ではないということもわかっています。
こうした後遺症を起こさないためにも、まず新型コロナウイルスに感染しないことが大切です。
新型コロナウイルスの後遺症も重症化と同様に、高齢者や基礎疾患のある人に多いです。しかし、若い健康な人でも後遺症がみられることもあるので、すべての年齢層で注意が必要です。
新型コロナウイルスが流行を起こしやすくなると考えられている冬季を目の前にして、いま一度、①マスクの着用、②3密を避ける(1密でも2密でも感染のリスクはあります)、③手洗いと咳エチケット、そして、④室内の換気の励行を徹底していただきたいと思います。
新型コロナウイルス感染症は、急性期だけでなく、治った後にもさまざまな症状が残ることがある恐ろしい感染症です。
岡田晴恵(白鷗大学教育学部教授)
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2020年10月19日号掲載