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学校施設

第71回 【教職員のメンタルヘルス】「保護者に学ぶ姿勢」が有効に

2020年10月19日
連載

教育相談の分野では「子供の情緒的安定は幼児期からの家庭での対応によって得られる」と言われています。そのため保護者に対して多大な期待を持ちやすく、問題志向の視点で考え、子供の不適応の原因を保護者に帰すことで保護者を悪者として扱ってしまいがちです。コロナ禍の中、保護者会や面談が中止や延期になっている今だからこそ、保護者との信頼関係をどのような形で構築するかが、学校の「喫緊の課題」の一つでしょう。

■受け止め方で変わる

 例えば、不登校のわが子の相談をするために来校した母親が「学校でいじめられているのではないか」と訴えたとします。教員側が「学校の対応に疑念をもっている」とか「学級担任への不信感が強いのでは」と受け取るか、「子供のことでとても心配になっているのだろう」とか「母親には見えない学校での様子が気になっているのだろう」と受け取るかによって、その後の両者の関係に“微妙な影を落とす”ことにもなるのです。

 また、子供が教員から不本意な扱い(暴言やハラスメント等)を受けたおり、その母親に対していくら学校側の正当性を主張しても「うちの子が悪いはずがない、可哀そう」と跳ね返すケースがあります。その訴えを「手に負えない母親だ」と感情的に受け止めるか、「子供の手前、母親の威厳を示すために頑張っているのだろう」とか「困った母親ではなく、困っているのは母親の方なのだ」と教員自身が“複眼的思考”で、母親の心情に思いを巡らすことができるかどうか。教師の力量が問われる場面が今度益々増えてくるでしょう。

■解決志向の視点

 このような状況では解決志向の視点が重要です。この母親の「不適切な対応」を問題にするのではなく「そうせざるを得ない事情は何か」に視点を移すことで、違った視界が広がります。保護者の中には「子供の問題行動は親の責任」という観念に拘束を受けている人もおり、必要以上に自責的な発想となったり、保護者自身がメンタル面で問題を抱えていたりする場合も少なくありません。

 学校が常識的な対応をした場合の反応が、無関心や他罰的に見える場合もあります。これを保護者の“本当の思い”と受け取ってしまえば、対立的な構図を強める結果となるかもしれないのです。

 保護者のメッセージがいかに非常識でも、立場上どうしてもそう言い切らなければならない理由は様々に考えられます。それを教員が「親はこうするのが当たり前だ」と、“子どもと接する時と同じような姿勢”で保護者に向かったら、その先には教員側の“落とし穴”が待ち受けているのです。学校に苦情を訴える母親は、得てして地域社会や家庭の中でも孤立しがちな人が多く、子育てを“一人で頑張っている”母親です。見方を変えれば、学校に苦情を訴えるという形を取りながら、「救いを求めている保護者」である場合も少なくないのです。

■支える姿勢に変える

 たとえ子供や保護者側に非があったとしても、結果的に学校側が保護者や子供に心配をかけたことは紛れもない事実です。学校側がその点をまず謝罪した上で、「どうしたら良いか一緒に考えましょう」という、保護者を支える姿勢に変わることができれば素晴らしいことです。

 その頃には、対立関係でスタートした話し合いが同じベクトルの向きに変貌しているはずです。「保護者に学ぶ姿勢の醸成」が、希薄になった保護者と学校との繋がりを回復させる“有効打”になるに違いありません。あなたの学校の現状はいかがでしょうか。


 筆者=土井一博(どい・かずひろ)順天堂大学国際教養学部教職課程客員教授、教職員メンタルサポートネットワーク協会代表、埼玉県川口市教育委員会教職員メンタルヘルスチーフカウンセラー

教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2020年10月19日号掲載

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