「FUSEGU2020」は、(一社)日本感染症学会と(一社)日本環境感染学会が中心となり感染症予防を啓発する共同プロジェクト。この一環として、市民公開講座が8月21日にオンラインで開催された。テーマは「知っておきたい感染症のリスク・対策」。日本感染症学会の舘田一博理事長が新型コロナウイルスからの学びと今後の生活について、防衛医科大学校防衛医学研究センターの加來浩器教授が来年の国際的大規模イベントでリスクとなる輸入感染症について解説した。大学生とパネルディスカッションも実施した。
舘田理事長は、8月17日時点での国内・東京都内における新型コロナウイルスの流行状況を分析した。新型コロナウイルスの感染者数増加の波から少し遅れて、死亡者数増加の波がやってくる。第一波を経験して少し対応がうまくなったことは、第一波に比べて第二波のほうが死亡者数が少ないことからも見受けられた。
インフルエンザや花粉症でマスクをする習慣が根付いている日本。最初の段階で、日本のマスク文化が新型コロナウイルス感染症の蔓延を抑えた可能性は高い。皆が行う文化としての行動は、感染症を制御していく上では重要だ。有用性を知った上で、メリハリのあるマスクの活用が大切だ。
人・社会・国の分断を引き起こすのが新型コロナウイルスの特徴だ。差別や偏見にどう対応していくか、市民と行政・専門家の温度差をどう埋めるかなどを、一人ひとり考える必要がある。一方で、同調圧力や自粛の強要は差別や偏見につながるので避ける必要がある。
舘田理事長は「新型コロナウイルスだけでなく、他の感染症も、専門家だけでは防げない。一般市民との連携が重要だと感じる」と話した。
感染症は、感染源・感染経路・感受性者(感染する人)の3要素で成立する。平時は公衆衛生基盤を整備することで、感染症をコントロールしているが、国際的マスギャザリング時は、本来日本国内にない病原体(感染源)が輸入される可能性を考慮しなければならない。そのため、海外での輸入感染症の流行状況も知っておく必要がある。
加來教授は、国際的なマスギャザリングイベント時に注意する感染症として、麻疹や風疹、デング熱、髄膜炎菌感染症などを紹介。感染症のリスク評価を、「症状」の強さと「感染力」の強さの二軸で評価した。
パネルディスカッションでは、正しいかどうか分からない情報を周囲と共有することのリスクを感じた経験や、膨大な情報の中から必要な情報を的確に得ることの難しさを大学生が研究者たちと語り合った。
市民公開講座の動画は、日本感染症学会のYouTube公式チャンネルで公開している。
詳細=https://www.youtube.com/watch?v=96yOe7Uky5k
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2020年9月21日号掲載