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学校施設

第70回 【教職員のメンタルヘルス】管理職もメンタルケアが大切

2020年9月21日
連載

■校長が児童とトラブル

ある小学校に新人D校長が赴任してきました。

 登校した校庭でK子と出会ったD校長は、いきなり腕をとり、K子のクラスが授業を行っていた場所に連れて行こうとしたのです。びっくりしたK子は、授業を受けずに帰宅し母親に話しました。翌日、K子の母親から「うちの子供が校長からセクハラを受けた」との訴えがあり、学校に乗り込んできました。面会した校長は曖昧な謝罪の仕方をしたため、母親はますます態度を硬化させ、以降、校長と面会もしません。現在はかろうじて教頭が対応を継続しています。

■親の苦情続出する教頭

ある小学校に赴任してきたB教頭は、赴任先の学校でことごとく保護者とのトラブルを引き起こしてしまいます。B教頭と面会した保護者が口々に「あの教頭とは今後一切話したくない」とすごい剣幕で帰っていくのです。保護者たちからは「私たちに対する物言いが高飛車で、高圧的で我慢が出来ない」という苦情でした。

■進む教員の世代交代

都市部では、最近は40代後半で校長に昇任する人も少しずつ増えてきました。15年前くらいには50代の校長が多数在籍しておりました。その方たちが退職され、その後を40代の人たちが引き継ぐはずなのですが、当時の40代教員は採用数を極端に控えた世代なので、管理職になる絶対数が少ないのです。したがって校長の大量退職の後は、一気に校長の若返りが進み、50代を飛び越えていきなり今は40代の校長が誕生する現象が生じています。

教員の世代交代は現在進行中です。若返りのスピードが早い自治体では、シニア層の大量退職をうけて20代教員の採用が増え、現在ではその若手教員の採用自体が減少してきている自治体もあるようです。本来、若手教員を育成する役割を担うはずの教頭や副校長が、膨大な事務作業等に追われ、若手教員の育成にまで手が回らないのが現状です。加えて、教頭や副校長自身が有している課題に向き合い、問題解決を図るための十分な時間的余裕もないようです。

例えば、保護者対応が苦手、本人が発達課題を抱えている等の自己盲点に気づかないまま校長になると、他者評価を受ける機会が極端に減少します。そのため自校の教職員に過重なストレスを負わせてしまう結果を招いたとしたら、取り返しのつかないことにもなりかねません。

私が奉職している埼玉県川口市教育委員会では、当初は「教職員を対象としたメンタルケア」というざっくりとしたスタートの仕方でしたが、最近では、新採教員や転勤1年目教員を対象としたメンタルケアと、校長・教頭などの管理職を対象としたメンタルケアの2本柱として、より対象を明確にして予防的援助活動を展開しています。


筆者=土井一博(どい・かずひろ)順天堂大学国際教養学部教職課程客員教授、教職員メンタルサポートネットワーク協会代表、埼玉県川口市教育委員会教職員メンタルヘルスチーフカウンセラー

教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2020年9月21日号掲載

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