農林水産省は「第4回食育活動表彰」の受賞者を5月22日に発表した。その実践で農林水産大臣賞を受賞した京都市立高倉小学校の食育カリキュラム「高倉スタンダード」について、同校の岸田蘭子前校長に聞いた。なお、同省は、食育を推進する優れた取組を表彰する「第5回食育活動表彰」の募集を10月30日(必着)まで受付中だ。
同校は、昨年度までの6年間で「本物の体験から学び、食べる営みを慈しむ子供」を育てることをめざした食育活動を推進。家庭や地域と連携しながら独自の食育カリキュラムを作り上げた。
京都市内の料理人や職人、商店など地域の職に関する専門家を講師として招き、だしについて学ぶ味覚の授業や魚料理体験など「本物の体験」を取り入れた。地元の日本料理人に伝統食文化を教わったり、シェフによる野菜の授業を実施したほか、地域の屋上農園での農育体験も実施した。
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子供が夢を実現できるよう、「生きる力」の基盤となる食の営みを慈しむ子を育てたいと考えました。京都が誇る伝統文化の中心地にある本校は、校区にある教育資源を有意義に活用できる一方、都市部ゆえの子供たちの体験不足が課題でした。育てて食べることや、食が人をつなげることなど、実感を伴った理解ができる工夫をしました。
食育カリキュラムの形にしたのは、体系化すると全教職員に各取組が目標に向かう道筋が見えるからです。保護者や地域にも学校の理念や取組を知り協力してもらえました。各講師が関わる授業がカリキュラムのどこに位置づくのかも一目瞭然なので、参画意識を共有できました。
まず就学前の子供たちに給食参観を実施することで、不安を取り除けました。どんな給食をどれくらい食べるのか、実際に見通しが持てることは安心感につながります。「残したら怒られるのでは」「好き嫌いがあるのにどうしよう」という質問もありましたが、先輩の1年生に「人によって食べられる量には違いがあるから、自分に合った量をしっかり食べきれるようになったらいいよ」などと言ってもらって安心していました。
食べることに興味のない子たちも、授業や体験を通じて好きになります。みんなで育てたものは大切に食べようと考えるし、プロの料理人のすごさに感動して興味をもち、帰宅後に家族に授業や体験を話し、食の話題を大切にしています。
高学年では家庭科の授業を中心に食育を充実させ、生活の中で実践させています。授業参観や通信で発信して一緒に体験してもらうなど、保護者自身も興味関心をもてます。食生活は学校だけでは変えられません。家庭の理解と協力は大きいです。
食育カリキュラムという形で体系化することで、持続可能な形で学校独自の食文化を継承していけます。ぜひ他校でも、学校・家庭・地域で協力して作っていってほしいと思います。
京都は、和食という無形文化遺産を受け継いでいく土地でもあります。その地域の特色を生かした食育カリキュラムを根づかせていきたいです。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2020年8月17日号掲載