第31回コンシューマーズカフェ(主催=NPO法人くらしとバイオプラザ21)が、6月23日にオンラインで開催された。講師として大阪学院大学の田中豊教授が登壇し、新型コロナウイルス感染症(COVID―19)の流行期における「リスク、うわさ、パニックの心理学」について解説した。リスクが過大に見積もられやすい要因は、主観的なリスク認知によるところが大きいため、不安を冷静に見つめることが重要だ。
損失の程度と発生する確率によって算出されるリスクを、主観的・直感的にどの程度大きいと考えるかを指す「リスク認知」。一般人のリスク認知は、科学的・客観的な危険性とはしばしば程度が異なっている。
専門家の判断は科学的指標によるものだが、一般人は特定の出来事の目新しさや鮮明さ、制御性、知覚可能かなど、より直感的な判断に基づいて判断する。人間は生まれつき、リスク判断時にバイアス(思考判断の偏り)がかかりやすい。リスクに対する基本的な考え方(リスクリテラシー)が定着していない人が多いことも課題だ。
専門家と一般人が両者とも自分の判断が正しいと主張し、相手を理解できずにいる間は、建設的な議論ができない。
重大なリスクが克服されると、それよりも一段階低いリスクを重大なリスクであるかのように認知しやすい。他にも、個人ではコントロールできないことに対し、リスクが過大に見積もられる傾向がある。
COVID―19リスクの妥当性評価が難しい要因には、①医療崩壊を起こすリスクも考慮する必要がある、②個人の属性により重症化の確率が大きく異なる、③第二波以降の拡大予測が困難、④経済不況によるリスク増大への考慮も必要、の4点がある。
緊急事態宣言下では、SNSの虚偽情報の拡散により、品薄ではなかったトイレットペーパーなどの買い占めが行われた。パニックによる買い占め行動の対策としては、①不適切な情報の流布による社会的混乱・責任を自覚し情報発信は慎重に行う、②SNSなどの情報をチェックする取組を広める、③利己的にならず協力的行動を取ること、などが必要だ。
田中教授は「不安を感じても一旦立ち止まり、リスクを冷静に考え行動できる人を増やすことが大切。不適切な情報に惑わされず、利己的な行動を慎んでほしい」と語った。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2020年7月20日号掲載